トランプ弾劾 ボルトンと女性2人
Japan In-depth / 2020年2月1日 11時0分
島田洋一(福井県立大学教授)
「島田洋一の国際政治力」
【まとめ】
・「背後からの一突き」との非難受け、ボルトン氏の株は急降下。
・弾劾への反対尋問で共和党ステファニク議員の株は急上昇。
・米前国連大使ヘイリー氏もトランプ氏の強力な援軍に。
1月26日、ニューヨーク・タイムズが、ジョン・ボルトン前大統領安保補佐官の近著(3月17日発売予定の回顧録)に、トランプ大統領がウクライナへの軍事支援に当たり、ジョー・バイデン前副大統領(民主党の大統領候補)らの職権乱用疑惑の調査を交換条件にしたとの記述がある旨報じた。
まさにその点を弾劾事由としていた民主党側は勢いづき、一方、共和党側からは、トランプ大統領自身を筆頭に、ボルトン氏の「背後からの一突き」(backstabbing)を非難する声が上がっている。
ボルトン氏に最も近い1人、フレッド・フライツ国家安全保障センター長(元NSC事務局長)も、ボルトン氏はせめて回顧録出版を今年11月の大統領選の後まで延期すべきだと「重い心で」苦言を呈している。
▲写真 ジョン・ボルトン前大統領安保補佐官 出典: John Bolton twitter
政権を離れたとは言え、ボルトン氏には、特に北朝鮮問題で、宥和政策阻止の立場から影響力を保持してもらわねばならない。日本にとっても憂慮すべき展開と言える。
一方、弾劾問題で共和党に新たなスターも登場した。女性のエリス・ステファニク下院議員(Elise Stefanik)である。
▲写真 エリス・ステファニク共和党下院議員 出典: 米下院議会ホームページ
2014年に30才で初当選した同議員はまだ35才と若く、民主党側の新星アレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員が2018年に29才で当選するまで、女性議員の歴代最年少記録保持者だった。
社会政策で中道の立場を取るため、保守派から「仲間」とは見られてこなかったが、弾劾審議を最初に扱った下院情報委員会の共和党唯一の女性メンバーとして「反対尋問」で大いに気を吐き一躍注目を集めた。逆にリベラル派からは目の敵にされている。
中でもマシュー・ダウドABCニュース解説委員の「ただ女だから、若いからといって選んではならない完璧な例がエリス・ステファニクだ」とのツイートは、陰険かつ女性差別的との轟々たる逆非難に晒され、謝罪・撤回に追い込まれた。
ステファニク氏は、弾劾推進の中心人物アダム・シフ下院情報委員長(民主党)の議事運営が著しく党派的で公正を欠くと厳しく論難する一方、証人の政府職員らに対しては、鋭いが嫌味のない質問を次々行った。議場に朗々と響き渡る明るい声で、滑舌も素晴らしい。下院の公聴会全般が退屈と評された中で、自然注目の的となった。
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