世銀が中国を援助する不思議
Japan In-depth / 2020年2月4日 11時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・世界第二の経済大国中国が世銀から巨額の経済支援を受け続けていることは不当。
・「国別パートナーシップ枠組み」で中国に対し2025年まで毎年10億から15億ドルの金融支援決定。
・日本は世界銀行にはアメリカに次ぐ二番目の額を出資。
世界銀行というのは開発途上にある貧しい小国を支援するために設立された国際機関である。
ところがその世界銀行の援助資金が中国に巨額に提供されている。おかしいではないか、とアメリカのトランプ政権が抗議の声をあげた。わが日本も世界銀行にはアメリカに次ぐ多額の資金を出資しており、無縁の論議ではない。
「世界第二の経済大国の中国が世界銀行から開発途上国並みの巨額の経済支援を受け続けていることは不当だから止めるべきだ」――アメリカのトランプ政権が公式にこうした抗議を表明し始めた。
▲写真 ホワイトハウスにて市長らに対して演説するトランプ大統領(2020年1月24日)出典:Frickr: the white house
1946年に創設された世界銀行は開発途上国の経済成長と貧困削減を目的として特別の低金利の融資や技術供与、政策助言などをする国際開発機関である。現在の加盟国は189ヵ国、本部はアメリカの首都ワシントンにある。
加盟国は経済開発の度合いに合わせて、援助を受ける国と援助を供する国とに分けられる。
この世界銀行は昨年12月に「国別パートナーシップ枠組み」と題する新たな国別支援計画を決めた。そのなかで中国に対して2025年まで毎年、10億ドルから15億ドルの金融支援を続けることを決定していた。
中国は現在は世界第二の経済大国に成長しながらもなお世界銀行の枠内では援助を受ける国として扱われ、一般の商業融資より低い4%台の金利での援助融資を受けてきた。
中国は1981年に世銀に加盟して以来、援助を受ける国として2018年までに総額600億ドルに達する援助融資を得てきた。この間、中国の経済は急成長を続け、2010年にはGDP(国内総生産)では日本を抜いて世界第二位となったが、なお世銀からは継続して援助を受けてきた。
この状況に対してトランプ大統領が昨年12月上旬、ツイッターで「なぜ世界銀行は中国に融資をするのか。こんなことがあってよいのか。中国は独自の資金を豊富に持っているのだ」と抗議の意を表明した。その背後にはアメリカ政府の明確な意向が存在していた。
Why is the World Bank loaning money to China? Can this be possible? China has plenty of money, and if they don’t, they create it. STOP!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) December 7, 2019
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