コロナ拡散で習近平体制危機
Japan In-depth / 2020年2月25日 23時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・米、コロナウイルス拡散は習近平体制の失態と認識。
・米研究員はコロナ拡大が習主席の統治能力不足の証明を強調。
・感染拡大は『第二の武漢革命』の可能性。
中国発のコロナウイルス感染症の世界各国で爆発的な広がりにつれ、アメリカではこの現象を共産党独裁の根本的な欠陥の露呈ととらえる見方が強くなってきた。今回の伝染病の異様な拡散がとくに習近平体制の失態と危機とみなす認識だといえる。コロナウイルスは全世界の中国への見方を変え、中国を実際に弱くするという見解でもある。
つまりはこの感染症を公衆衛生の危機だけでなく中国という国家のあり方に連結させて習独裁体制を非難する反応だといえる。そうした反応の代表例を紹介しよう。
アメリカのスタンフォード大学フーバー研究所のアジア問題の権威マイケル・オースリン研究員は大手紙ウォールストリート・ジャーナル紙2月7日付に「ワシントンから武漢まで、すべての視線が習近平に」と題する論文を発表した。
▲写真 マイケル・オースリン氏 出典:Flickr; U.S. Naval War College
同論文の趣旨はコロナウイルス感染を中国共産党政権の独裁の弱みの露呈だと断じるとともに、その感染拡大は習近平政権に内外での危機を招き、同政権の存続が問われるにも至りかねない、という主張だった。
オースリン氏の同論文は「習近平氏は自分の能力の評判が危機に瀕したことを知っている」という脇見出しでうたったように、今回のコロナウイルス感染症の爆発的な広がりが習近平主席や同政権にとっての内外での重大な危機をもたらした、と指摘していた。
オースリン氏はアジアの歴史や政治を専門とし、エール大学の教授やワシントンの大手研究機関AEIのアジア担当主任研究員などを務めてきた。著作も多く、日本を含む東アジアの研究では全米的に知られる学者である。
オースリン論文は冒頭で1911年に今回の感染症の発生地の武漢でやがては清朝の打倒につながった辛亥(ぼしん)革命の第一段階の武昌蜂起が起きたという歴史上の事実をあげて、今回の武漢でのウイルス事件も同様に中国の時の支配権力を倒しうるという大胆な「歴史上の類似」を記していた。
そのうえでオースリン論文は以下の骨子を述べていた。
●武漢の感染症の広がりについて警告を発し、そのために政府から懲罰を受けた李文亮医師の死は、習近平政権がこの疾患を隠して、国民の生命よりも社会の支配を優先することに対して国民を激怒させた。
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