米政権、武漢ウイルスと明言
Japan In-depth / 2020年3月11日 11時47分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・アメリカでは「武漢ウイルス」という呼称が定着。
・中国当局はウイルスの発生源が武漢だと確定していないと反発。
・米政権は中国当局の情報隠蔽が感染拡大に繋がったという認識を崩さず。
いまや日本全体を恐怖と苦痛に陥れた中国発の新型コロナウイルスをどう呼ぶべきか。
アメリカではトランプ政権のマイク・ポンペオ国務長官が「これは武漢ウイルスだ」と改めて断言した。アメリカの専門家やメディアでも「武漢コロナウイルス」という呼称が広まってきた。
だが中国政府はこの種の呼称に断固として反対する。このウイルス感染症を中国と直接に連結されることを嫌がるわけだ。この呼称をめぐる論議はいま全世界を悩ますウイルス感染症の本質にもかかわる重要な争点だといえよう。
新型コロナウイルス感染症はアメリカのメディアの多くではなお「COVID-19」と呼ばれている。Coronavirus(コロナウイルス)とDisease(病気)という言葉の文字の一部を取り、発生年次の2019年の数字をつけた名称で世界保健機関(WHO)が先導した。
同じ新型コロナウイルスのウイルス自体は厳密には感染症とは別の名称で、「SARS-CoV-2」と呼ばれる。この名称はアメリカの一般メディアで使われることは少ない。SARSはsevere acute respiratory syndromeの頭文字を取った略で、日本語では「重症急性呼吸器症候群」である。
SARSは2003年に中国南部の広東省を起源とした重症な呼吸器障害で世界に広がった。その原因となったコロナウイルスがSARS-CoVと呼ばれたので、今回はその第2型とされたという。いずれにしてもアメリカ全般ではいまはウイルスとその感染症を含めてCOVID-19と呼ばれることが多いわけだ。だがそのウイルスも感染症も正確な実態はわかっていない。
▲写真 CDCのCOVID-19 臨床検査キット 出典:CDC
ところがポンペオ国務長官はトランプ政権を代表する形で3月6日のワシントンでのテレビ・インタビューで中国側がこのウイルス感染症の起源を曖昧にし始めたことに対する反論として「これはまさに武漢コロナウイルスだ」と述べた。
同長官はその以前にも公式の発言のなかで、今回のコロナウイルスを「武漢コロナウイルス」と何度も呼んできた。6日の発言はその繰り返しであるとともに、中国外務省の報道官が3月4日に「このウイルスの発生源がどこであるかについてはまだ結論は出ていない」と述べたことへの米側としての公式の反論だった。
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