空自輸送機調達のいい加減さ
Japan In-depth / 2020年3月14日 23時43分
性能面でも問題がある。C-2は空自が不整地での運用を要求していなかったので、舗装された滑走路以外では運用できない。これはPKOなどで未舗装の滑走路では離着陸できないというだけではなく、航空基地が爆撃などによって、応急補修された場合や、東日本大震災のように被災した空港にも降りられない。軍用輸送機としては完全に失格である。平時での運用しか想定しない。
これはC-2の海外販売が成功しない一因ともなっている、まともな軍隊はこんな胡乱で高価な機体を購入しない。
ペイロードが8tのC-1退役による少量輸送を行う機体がなくなる。またC-130Hも調達からかなりの時間が経過し老朽化している。だが空幕はC-2以外の輸送機の調達計画を持っていない。22機のC-2で自衛隊の輸送を担うのは非現実的だ。
数トンの貨物の輸送にC-2を使うのは軽ワゴンで十分な仕事に20トンのトレラーラーを使うようなもので、コストがかかり過ぎ、非効率だ。しかも小さな飛行場では運用でない。
また空自には特殊部隊運用のための固定翼輸送機部隊が存在しない。陸自には特殊部隊である特殊作戦群(現在300名だが、380名に増員予定)があるが、特殊部隊を投射するための固定翼輸送機もない。あるのは第一ヘリ団のUH-60ヘリだけだ。諸外国では特殊部隊専用の固定翼の輸送機を保有している。通常の輸送機では特殊部隊の運用に必要な夜間での低空飛行などが不可能なためだ。本来このような機体も必要だ。現状では南西諸島で有事があっても特殊部隊を投入できない。
オスプレイに給油する給油機を兼ねた輸送機も足りない。空自のC-130Hで空中給油機能を有しているは4機だけだ。これは救難ヘリの空輸用であり、オスプレイなどに給油するのであれば数が全く足りない。また空挺部隊の訓練や軽輸送に使えるC-1のような小型の輸送機もなくなる。現状すら機体のやりくりがつかず、第一空挺団の降下訓練にも支障を来している。
C-2の調達を減らしてC-130Hの近代化、あるいはより新しいC-130Jなどの同クラスの輸送機の輸送機(特殊部隊用含む)、更にはより小さい輸送機、例えばペイロード11トンクラスのC-27スパルタンなどの調達も検討すべきだ。C-27はC-130Jと共通のエンジンを使用しているのでC-130Jを導入すれば兵站面でのメリットも大きい。また高い空中機動性があり、特殊作戦にも適した機体である。
▲写真 C-27 出典:著者撮影
もっと小さな輸送機も小口輸送や訓練に必要だ。例えばロッキード・マーティン傘下のシコルスキーの子会社、ポーランドのPZLミエレクのM28軽輸送機だ。M28は双発ターボプロップで貨物搭載量は2.3トン、搭乗人員19名。胴体後部に左右に開く貨物扉を持ち、空挺降下も可能だ。
▲写真 M28 出典:PZLミエレク
また短距離離着陸性能(STOL性)に優れ、頑丈な機体構造と相まって他機種の運航が難しい飛行場、簡易滑走路からでも運用が可能だ。通常の小口輸送、空挺降下の訓練、特殊部隊、災害派遣などでこのような小型の輸送機は大変有用なはずだ。しかも運用コストは格段に低い。空自は現実を直視し、輸送機のポートフォリオを見直すべきだ。
トップ写真:C-2輸送機 出典:航空自衛隊
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