ベトナム、強制自白映像放映
Japan In-depth / 2020年3月19日 18時0分
大塚智彦(フリージャーナリスト)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
ベトナムで国民向けに、「強制自白映像」を国営テレビ局などで放映している問題。
ベトナム当局は「強制自白」の手口を中国から学んでいる。
強制自白は国内法、そしてベトナム刑法にも違反。
ベトナム当局が主に人権活動家を対象に国内治安維持違反容疑などで逮捕した事案で容疑者に強制的に罪を認めて謝罪させる「強制自白映像」を撮影して、国民向けに国営テレビ局などで放映していることがスペインに本拠を置く国際的な人権NGOの調査で明らかになった。
ベトナム共産党支配下のベトナムでは実質的な報道の自由も司法の独立も存在しないといわれているだけに、こうした組織的な司法の不正、歪曲が暴露されたことで、国際的な批判がさらに高まるのは必至とみられている。
これは米政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」が3月11日に伝えたもので、スペインのマドリードに本部を置くNGO組織「セーフガード・ディフェンダーズ」がまとめた調査結果の報告に基づくもので2007年以降、同NGOが16件、21人の強制自白とみられる映像を確認したという。
16件の映像のうち14件は人権擁護弁護士、市民ジャーナリストなどの人権活動家と土地所有問題に抗議して逮捕された村人に関するもので、1件は汚職容疑が持たれた国営石油会社の幹部、残る1件は殺人容疑の農民という。
同NGOでは確認されたのはあくまで「氷山の一角で実際に強制自白に追い込まれているケースははるかに多いとみられる」としている。
★米国系ベトナム人と警察官殺人のケース
同NGOが報告の中で具体的な「強制自白」として挙げているのがウィリアム・グエン氏というベトナム在住米国市民のケース。2018年に放映された映像の中でグエン氏は青色の背景の前にして登場し、警察の尋問とはことなる雰囲気で自然な語り口で自らの罪を自白しているという。
グエン氏は米テキサス州ヒューストンの大学卒業でその後ベトナムに渡り、大規模な反政府デモに参加したことが「社会秩序を乱した」として逮捕され、罪を認めたために国外追放処分を受けたという。
また2018年1月9日にドンタム地方ホアン村で地域の指導者レ・ディン・キン氏(84)が土地収用問題を巡る問題に関係して現職の警察官によって射殺される事件が起きた。
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