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京大総長が説く ゴリラに学べ

Japan In-depth / 2020年3月23日 21時0分

仲良くなるとゴリラは遊びにくる。タイタスと名付けたゴリラは、雨が降った時、山極さんが樹洞に入って雨宿りしていたら、後から雨を避けようと同じ洞に入ってきて山極さんの膝の上に座り、そのまま寝てしまったこともある。ゴリラとの挨拶は“グフーム”と低い声を出し、コホコホと咳をすれば、“違う”という意思表示になるともいう。


 


■ 家族を大事にするゴリラ社会と人間


ゴリラ社会は家族を大事にし、互いに奉仕したり、子供と遊ぶ能力を持ち、食べ物を分け合って平和的に食事をするが、サルはヒエラルキーの社会で相手の強弱によって関係を作り、家庭よりも集団の中で生きる。


人間は家族を大事にするが、自分の属する集団にも強いアイデンティティを感じ、食物や仕事の分配・分担を行なう互酬性の社会を作って子育てを行ない、平等意識を持って暮らす社会を形成、どちらかというとサル社会よりゴリラ社会に似ている。ただ人間は物事を考え、考えたことや学んだ知識を頭に蓄え、それらをつなぎ合わせたり構成し直したりしてまた新たな構想、世界を作り出す能力を持つことが大きな特色だという。そこに人間とゴリラや他の動物との違いがあり、そのことによって人間は成長、進化してきたとみる。


 


■ IT化・AIは人間を衰弱させる


ただ最近はIT化が進み、人工知能が出現。さらにロボットによって働き方も変わってきたことにより、人間はむしろ退化してきたのではないかと山極さんは心配する。かつては頭の中に蓄えていた知識をパソコンなどに置き換え必要な時に取り出すようになってしまったし、人工知能やロボットに物事を考えること、働くことなどを機械に任せるようになってきたからだ。



▲画像 人工知能イメージ 出典: Pixabay / Pete Linforth


身近な例ではかつては家族や友人の電話番号などを10人分くらいは覚えていたが、今は携帯に登録しているので覚えていないし、働く手順を考えだしたり、大きな構想力で世界をつかみ取ったりする思考方法は衰えてきていると危惧するのだ。ITや機械に頼りすぎて物事を考える力が衰退し、学んだことをパソコンや人口知能、ロボットなどに入れ込んだり落とし込み、代用させるとなんでもボタン一つ押せば片付くと考えるようになってしまったというのである。すると人間は互いに話し合って新たな方法や解決策を見つける手間を省くようになり、一見、便利そうに見えたが人間はだんだん大きな構想力を持たず、話し合いも少なく、経済優先となり孤独化し、内向的になってゆく。それが現代社会の特徴として出てきているのではないかというのだ。


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