米、中国の虚偽情報に反論せよ
Japan In-depth / 2020年4月7日 23時34分
なおこのあたりの当時の実情を私は中国事情に精通する産経新聞前北京特派員の矢板明夫記者との最近の共著『米中激突と日本の針路』のなかで詳しく解説している。
▲画像 「米中激突と日本の針路(古森義久・矢坂明夫 共著)」 出典:海竜社「米中激突と日本の針路」
中国の武漢でこのウイルス感染症が昨年12月ごろから爆発的に広がり、習近平政権もついに隠しきれず、今年1月20日ごろにはその拡散の事実を公式に認めて、武漢市全体の封鎖など大規模な対策を次々に取り始めた。
その当時は中国政府も非公式に新型コロナウイルスが当初、武漢市内の海鮮物市場で発生したことを認めていた。
ところが今年の2月ごろから中国側の民間で「このウイルスはアメリカが中国への細菌戦争として広めたのだ」とか、「アメリカの軍人が昨年秋に武漢に危険なウイルスを持ちこんだのだ」という陰謀説的な怪情報が流れ始めた。
武漢市では確かに2019年10月に「世界軍人陸上競技大会」というスポーツイベントが開かれ、各国の軍人が参加したなかに米軍将兵約170人がいた。しかしその「ウイルス持ち込み説」にはなんの根拠もなかった。
▲画像 世界軍人陸上競技大会2019 開会式 出典:独防衛省
民間の責任のない男女がウワサとして広めているうちは問題はないが、この説は中政府高官からも発信されるようになった。
中国政府外務省の趙立堅報道官はまず3月4日の公式の記者会見で「このウイルスが中国で最初に発生したことの証拠はない」と言明したのだ。「中国で最初に発見されたかもしれないが、起源が中国だという結論は出ていない」とも述べた。
趙報道官はそしてその後の自分のツイッターで「このコロナウイルスはアメリカ陸軍の軍人たちによって武漢へ持ちこまれたかもしれない。アメリカ政府はその説明をする義務がある」と記したのだった。
▲画像 「コロナウイルスは米軍により持ち込まれたかもしれない」という内容が記されたツィート。 出典:Twitter tweeted by LijianZhao
この種の「コロナウイルスは中国で最初に発生したとは断定できない」という趣旨の言明は中国政府のさらに上位の高官たちによってもなされるようになった。外交担当国務委員の楊潔篪氏、外務大臣の王毅氏、駐アメリカ大使の崔天凱氏らだった。
中国外交の頂点にいるこれら高官たちは習近平政権全体の意向として「コロナウイルスは中国が起源とはいえない」とか「米軍が武漢に持ちこんだかもしれない」という説を明言、あるいは示唆するようになったのだ。
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