コロナ禍、中国南シナ海で攻勢
Japan In-depth / 2020年4月10日 23時0分
大塚智彦(フリージャーナリスト)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・各国が感染対策に追われる中、中国が南シナ海で活動活発化。
・南沙諸島では、中国公船と衝突したベトナム漁船が沈没。
・米が中国に抗議。各国はウイルスでの対中反感と警戒感強める。
フィリピンやベトナム、マレーシア、ブルネイの東南アジア4カ国と中国、台湾がそれぞれに一部島嶼の領有権を主張する南シナ海で一方的にその大半の島の領有権を主張した上に独自に人工島の埋め立てや軍事施設の建設などで「実効支配」を続けている中国が、3月、4月と同海域での活動を活発化させていることがわかった。
日米をはじめ東南アジア各国も新型コロナウイルスの感染拡大を受けて非常事態宣言や夜間外出禁止令などその拡大阻止への対応策で手一杯の状態が続いている。中国はその各国政府のコロナ対策集中の間隙をぬう形で、いってみれば「どさくさ紛れ」で活動を活発化させているため、関係国の間で中国批判が高まっている。
特に南シナ海での中国の一方的な権益拡大を警戒している米国は、国務省が中国への抗議声明を発表するなど強い姿勢を示し、国際社会が直面するコロナ対策に一致して取り組むよう求める事態となっている。
■ベトナム漁船が体当たりされ沈没
4月2日深夜午前零時ごろ、ベトナム中南部のクアンガイ省から出港したベトナム漁船「QNg90617」が南シナ海西沙諸島にあるウッディ島付近で操業中に突然沈没して連絡が途絶える事件があった。
▲写真 ベトナムの漁船(資料写真)。 出典:flickr; Linh Vien Thai
米政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」の報道によると、ベトナム政府は翌3日に中国海警局の船舶から周辺海域にいたベトナム漁船に沈没した漁船の乗組員8人が引き渡されたことを確認したという。
中国側の説明によると、沈没した漁船は中国の海域に不法に侵入して違法操業していたところ中国の海警局船舶「4301」と衝突して自沈したと主張。4302艇が直ちに海上のベトナム人漁民を救出して僚船に引き渡したと説明しているという。
ウッディ島は西沙諸島で最大規模の島で中国、ベトナム、台湾が領有権を主張しているが、中国による滑走路などの空軍施設や海事基地の建設が進み、約1000人の中国人が居住して実効支配を続けている。
▲写真 南シナ海西沙諸島ウッディ島(2009年4月9日)出典:Paul Spijkers
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