コロナ禍、中国南シナ海で攻勢
Japan In-depth / 2020年4月10日 23時0分
こうした中国側の主張に対しベトナム政府は「中国側の船舶が深夜意図的に突っ込んで来て衝突、沈没させられた」として中国側に強く抗議する事態になっている。
■フィリピン支配の島に接近
またそれ以前の3月9日から30日にかけて南シナ海の南沙諸島にある、フィリピンが兵士を駐留させるなど実効支配しているセカンド・トーマス礁と付近の島嶼に中国海警局の船舶「5302」が接近して示威活動を行ったとRFAが4月1日に伝えた。
同礁は中国、台湾、フィリピン、ベトナムがそれぞれに領有権を主張しているが1999年以来フィリピンが実効支配を続けている。
▲写真 南シナ海南沙諸島にあるセカンド・トーマス礁(2001年1月24日) 出典: NASA (Public domain)
中国海警局の「5302」は周辺海域の他の島や礁にも接近するなど活発な活動を繰り返したという。
さらに南シナ海で最大の中国による人工島であるファイアリー・クロス礁の滑走路に特殊な軍用機が着陸するのも確認されたほか、同礁と同じく中国の人工島であるスビ礁でも海事調査拠点と称する海上構築物の建造が進んでいるという。
こうした中国側の動きに対しフィリピンの政治戦略研究所研究員で軍事アナリストのホセ・アントニオ・カストディオ氏はRFAのオンラインサービスである「ブナール・ニュース」に対して「コロナウイルスへの対応にフィリピン政府などが集中している最中のこうした中国の南シナ海での動きは事態を有利にしようとする動きだ」と中国を批判する。その上でこうした中国に対してドゥテルテ大統領が厳しく抗議するかどうかは疑問だとの見方を示し、対中外交で柔軟姿勢を続けるドゥテルテ政権の立場をも批判した。
■米国務省が抗議声明
こうした中国海警局船舶の航行や特殊軍用機の運用といった中国側の活動の活発化、そしてベトナム船舶への意図的と思われる中国艦船による衝突、その結果としての沈没といった強硬手段に対して米国政府が動いた。
4月6日、米国務省のモーガン・オルタガス報道官はベトナム漁船の沈没事件については特定の国を批判することは避けながらも「中国はパンデミックと戦う国際社会を引き続き支援することに力を注ぎ、外国の混乱や弱みを利用したような南シナ海での違法な領有権主張を拡大しないように求める」との声明を発表したとAFPが伝えている。
▲写真 モーガン・オルタガス米国務省報道官 出典:米国務省ホームページ
こうした一連の南シナ海での中国の活動の活発化は中国の習近平政権や海警局などの海事治安当局の強い意図の下で実行されていることは確実といわれている。
このため中国自身がコロナウイルスの対応に全力で取り組みながらも、その一方で周辺国がコロナウイルス問題への対応で苦慮する時期を特に狙ったような今回の一連の南シナ海での行動に対して「中国の底知れぬ野望と悪意が潜んでいる」としてベトナムやフィリピンでは新型コロナウイルス問題での中国への反感に加えて、中国への警戒感がさらに強まろうとしている。
トップ写真:イメージ。南沙諸島で訓練を行う中国海警局の船(2016年11月29日) 出典:行政院海岸巡防署南部地區巡防局
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