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人類と感染症8 スペイン風邪、日本で最初は「相撲風邪」

Japan In-depth / 2020年4月20日 12時7分

 


そこで、専門家の間では、別の可能性が指摘されている。中国起源説だ。当時、アメリカでは大陸横断鉄道が建設中で、多くの中国人労働者が出向いていた。その中に感染者がいたのではないかというのだ。


 


また、『感染症の世界史』(石弘之)によれば、アメリカのカンザス州で発生する前に、スペイン風邪とみられる呼吸器病が中国の国内ではやっていたという記録がある。当時行われていた第一次世界大戦では、英仏軍が、9万6000人の中国人労働者を西部戦線で使っていたという史実もあるという。


 


また中国かと思うと、ゲンナリするが、ともあれ、「相撲風邪」は4月に発生し、7月下旬には収束した。それほど話題になることもなく、比較的短い期間だった。これは、以前お伝えしたスペイン風邪の「前兆」だ。


 


そして、9月末から10月上旬にかけて、スペイン風邪は日本に本格的に上陸した。「第1波」が牙をむいた。


 


当初、軍隊で集団感染し、学校や企業にも広まった。各地で同時多発的に発生した。国内の鉄道網はすでに整備されており、短期間のうちに全国各地に広がった。


 


当時の日本の状況について、詳しく分析したのは、慶応大学名誉教授、速水融だ。速水が執筆した『日本を襲ったスペイン・インフルエンザ』(藤原書店)は全国の地方紙の報道を引用し、スペイン風邪の実態を描く。


 


滋賀県の小学校では、歩兵部隊を視察した後、児童の半数以上が感染し、死亡者も続出した。小中学校は軒並み休校。企業も欠勤者が急増し、社会は、機能不全に陥った。火葬場も大混乱した。大阪市では、遺体を処理しきれなくなり、大阪駅では、棺桶を乗せた列車が大幅に増えた。香川県丸亀市では、火葬が追いつかず、土葬に切り替えた。


 


ちなみに速水は、日本国内でのスペイン風邪の死者数について独自に試算した。それによると、死者数は45万人で、政府発表の38万人を上回った。関東大震災の5倍近くの犠牲者を出したことになる。


 


スペイン風邪は、発症すれば、40度近い高熱が出て、数日間で呼吸困難になり、死亡するケースが多くあった。特徴は、15歳から35歳の健康な若い人の感染が多かったことだ。普通のインフルエンザでは考えられないことだった。



▲画像 「手當が早ければ直ぐ治る」内務省の予防宣伝ポスター 出典:20世紀2001大事件


 


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