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人類と感染症11 感染症の原風景は「農耕生活」

Japan In-depth / 2020年4月27日 7時0分

自然に群れをつくっていた牛は、狭い囲いに押し込められた。オスの牛は去勢され、農作業に駆り出された。ムチや棒でたたかれた。また、メスの牛、ヤギ、ヒツジなどからは乳を出させた。子を産んだ直後を狙った。


「農民は、動物たちに乳を出し続けさせるために、子を産ませる必要があるが、子供たちに乳を独占させるわけにはいかない。歴史を通じて広く採られた方法は、生まれた直後にあっさり子を殺し、母親から搾れるだけ乳を搾り、それからまた妊娠させるというものだ」(同書、上P125)。


農耕民は、残忍なまでの方法で、動物を支配した。増え続ける人口に対応するため、耕作地を広げる必要があった。さらに、あえて、食べきれない量の農作物の生産に踏み切った。貯蔵するためだ。飢饉を恐れて、将来のリスクを考えるようになった。その日暮らしの狩猟民の生活から一変したのだ。貯蔵された農作物。それを虎視眈々と狙っていたのは、ネズミだ。格好の餌になる。ネズミはノミやダニを通して、感染症を拡げる。


農耕生活が始まる前、人類が飼っていたのは、犬だけだった。感染病の被害は少なかった。少人数なので、感染症もまん延しにくかった。ところが、農耕生活で家畜を飼うようになった。さらに、多くの人が住む集落ができた。感染症まん延の絶好の舞台ができたのだ。


これらの動物は家畜化される以前から、ユーラシア大陸の草原で群れをなしていたが、人類が支配下におさめた。


人類は動物の頂点に立った。しかし、そんな人類もコントロールできないのが、ウイルスや細菌だ。感染症に化けて襲い掛かる。人口が一気に減少する要因にもなる。



▲写真 細菌(イメージ) 出典:Pixabay; Arek Socha


それでは、ウイルスや細菌はどのようにして、人間社会に襲い掛かるのか。ウイルスは、インフルエンザやはしか、水ぼうそう、エイズなどを引き起こす。一方、細菌は、ペスト、コレラ、結核、破傷風などだ。


細菌とウイルスは似ているが、調べてみると、違いがあった。大きさは、ウイルスは細菌より、はるかに小さい。10分の1から100分の1ほどだ。ただ、もっと本質的な違いがあった。


細菌は、細胞があり、自分で成長してどんどん子孫を残せる。細胞分裂を起こす。一方、ウイルスは、自分で細胞を持たない。自力で増えたり、子孫を残したりすることができない。生き残るためには、ほかの動物の体の中に入り込む。ウイルスが入り込む動物こそが、「宿主」(しゅくしゅ)と呼ばれている。インフルエンザウイルスならカモ、エイズウイルスはサルだ。今回の新型コロナでは、コウモリとみられる。


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