中国「マスク外交」の失態
Japan In-depth / 2020年4月27日 11時19分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・〝発生源〟中国が他国の防疫を支援する「マスク外交」を展開。
・背景に「新型コロナがアメリカの世紀を終わらせた」との政治宣伝。
・世界各地で「中国のマスク外交の失態」次々と。逆効果招く事態に。
中国の武漢で発生した新型コロナウイルスは、今尚、全世界で猛威を振るっているが、中国政府は自国での感染を克服したとして、他国の防疫努力を支援するという言動を取り始めた。多数の被害諸国にマスクや人工呼吸器、医師団までを送るようになったのだ。この中国の対外活動は、欧米では「マスク外交」とも評される。では、その結果はどうなのか。
中国外務省の3月末の発表によると、中国政府は欧米、日本、東南アジア、中東、アフリカなど合計120ヵ国に医療用のマスクや防護服、検査キット、人工呼吸器などを提供し、合計170人に及ぶ中国人医師団をも派遣したという。
▲写真 中国山西省から埼玉県に送られたマスク(2万枚)と防護服(1千着)(2020年4月9日 埼玉県庁)。出典:埼玉県ホームページ
中国当局はこうした動きの背景として「新型コロナがアメリカの世紀を終わらせた。アメリカは世界の災難の前に他国を助けられない」(官営メディアの「環球時報」の評論)という強烈な政治宣伝を発信している。
批判されるアメリカの側では、中国がコロナウイルス感染を当初、隠蔽し、虚偽の情報までを流したことが国際的な感染を広げたという反論が多く、中国の今の動きに対しては「放火犯が消防士のふりをしている」というような辛辣な批判も出たほどだ。
▲写真 イタリアに到着した中国の医療チーム(2020年3月18日 ミラノ)出典China International Deveropment Cooperation Agency (cidca.gov.cn) [Photo/Xinhua]
さて、中国政府のこうしたコロナウイルスに関連する対外活動について、アメリカの大手紙ワシントン・ポストが世界各地の記者を動員した総合レポートを4月14日付の紙面に載せていた。
この記事は中国政府が自国の国際的な印象や指導力を宣伝するために、コロナウイルス感染防止のマスクや検査キットを寄贈するだけでなく、諸外国のメディアなどを利用して、中国に有利な主張や情報を発信する活動を広げている実態を伝えていた。
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