迷走WHO、誤報を翌日撤回
Japan In-depth / 2020年5月3日 17時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・WHOが「抗体検査に効果なし」と公式発表。翌日に撤回。
・各国専門家は反発。不手際はWHOの劣悪体質を反映か。
・日本のメディアは「抗体効果否定」声明だけ報じてないか。
中国への密着が論議を呼ぶ世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス感染症について、「抗体検査には効果がない」という趣旨の公式の「警報」を発し、そのわずか1日後にその発信が誤っていたとして撤回するという不手際を起こした。アメリカ政府からボイコットされるWHOはまた大きな失点を記録したといえる。
全世界にいま広がる中国発の新型コロナウイルスに対してはアメリカでも日本でもその防疫対策の一つとして抗体検査が進められている。この抗体とは個々人が同ウイルスにすでになんらかの形で感染して、血液内に生まれた同ウイルスへの免疫性を持つ分子を指す。検査でその抗体があれば、免疫があり、本格感染の危険はきわめて少なくなる、というわけだ。
ところがWHOは4月25日、この抗体検査の効果を否定する声明を出したのだ。以下の内容だった。
「新型コロナウイルスにかかって、回復し、抗体を持つようになった人が同じウイルスの再感染からは守られるということに関しては、いまのところその証拠はない」
つまり抗体による免疫が効果を発揮し、コロナウイルスの再感染を防ぐという考え方には根拠がない、と述べたのである。「証拠はない」というのだから抗体検査の効用の全面否定だともいえるだろう。
WHOはこの「抗体の効果に証拠なし」説を正規のウェブサイト上の「コロナウイルスに関する助言」という場所で発表しただけでなく、ツイッターでも同趣旨を広範に流したのだった。
その結果、各国の関係者が衝撃を受けた。コロナウイルス感染阻止のために必死になって、可能な限りのあらゆる手段を試みるなかでも最有力手段の一つとみられ始めた抗体検査の効用を権威のあるはずの国際機関のWHOが正面から否定したからだ。
アメリカなど数カ国ではこの抗体検査の効果を重視して、抗体があるという個人には免疫ができていて、コロナウイルスの再感染する危険はまずないとみなし、「免疫証明書」を発行することまで検討するようになっていたのだ。
アメリカなどの諸国ではこのWHOの突然の警告に反発する向きも多かった。専門家たちの間でも「抗体ができた人はなんらかの免疫を得ていることはまちがいない」と、WHOへの反発が表明された。
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