川崎病OK、武漢ウイルスNG?
Japan In-depth / 2020年5月6日 23時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・「武漢ウイルス」や「中国コロナ」は民族差別という意見も強い。
・特定の病気を特定名称に結びつけての命名は国際医学界では普通。
・「エボラ熱」「日本脳炎」等、地域や国名の名称での認知も多い。
中国の武漢発の新型コロナウイルスのニュースをみていたら、「川崎病」という言葉が飛び出した。この5月6日のことである。感染症の名称に関しては「武漢ウイルス」や「中国コロナ」というのは民族差別だからよくない、という意見も強い。ではなぜ川崎はよくて、武漢は悪いのだろうか。
6日朝のNHKニュースでは以下の報道があった。「ニューヨーク『川崎病』に似た症状確認 新型コロナと関連か」という見出しだった。その骨子は以下だった。
「アメリカのニューヨーク市は、全身の血管に炎症が起こる『川崎病』に似た症状の子どもが相次いで確認されたと発表し、新型コロナウイルスへの感染と関連している可能性があるとして注意を呼びかけました。こうした症状の子どもはヨーロッパ各国でも報告されていて、専門家による調査が行われています」
「子どもたちには発熱や発疹などの症状もあったということで、市の保健当局は、乳幼児に多い『川崎病』に似た症状だとしています」
「ニューヨーク市は『川崎病』に似た症状と、新型コロナウイルスへの感染が関連している可能性があるとして、医療機関や親に対し、こうした症状の子どもが見つかった場合、重症化を防ぐためにすぐに専門の医師に相談して早期に治療を始めるよう注意を呼びかけています」
「新型コロナウイルスの患者で、『川崎病』に似た症状を示す子どもはヨーロッパ各国でも報告されていて、専門家による調査が行われています」
以上の趣旨の報道は米欧メディアでも流された。「川崎病」はKawasaki diseaseと記されていた。さてこの名称からはふつうの日本人なら、あるいは日本のことをかなり知っている人間なら、神奈川県の川崎市を連想するだろう。特定の地名を病気の名前につけるのは本来、ごくふつうだったからだ。
しかしこの場合の「川崎」は地名ではなく、この感染症を最初に医学的な見地から確定した日本人の川崎富作博士の名に由来する。川崎博士が1967年に「小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群」として発表した感染症だという。手や足の指先から皮膚がむける症状の小児患者の病気で、国際的に認知され、名称も「川崎病」として定着した。
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