トランプ“目の敵”人物図鑑 その3 ファウチ米国立アレルギー・感染症研究所所長
Japan In-depth / 2020年5月8日 12時49分
大原ケイ(英語版権エージェント)
「アメリカ本音通信」
【まとめ】
・NIAIDファウチ医師はその正確な発言と風体で人気。
・ファウチ医師はトランプ大統領の発言を一蹴することも。
・トランプ氏はファウチ氏を下院議会には出席させず。
1984年以来、米アレルギー・感染症研究所(NIAID)の所長を務めてきたアンソニー・ファウチ医師は、7年前にエイズを発症させるHIVの研究の功労者としてコッホ賞を受賞したりと、6代にわたって大統領政権に感染症関連の助言をしてきた科学者だが、新型コロナウィルス発生以前はアメリカで一般市民に知られているような存在ではなかった。
その親しみのある穏やかな口調ながら、難解なウィルス感染の科学的見解から、医療現場の厳しい状況まで、包み隠さす正確に伝えてくれる気の優しい親戚のおじいちゃん、という風体で今やすっかりアメリカのお茶の間でもファンが多い人物だ。特に、感染者数・死者数が全米最悪となったニューヨークでは、ブルックリンで生まれ育ったファウチは人気がある。最初はドナルド・トランプ大統領も「私にはこんなに疫病学に精通したスタッフがいるんだ」とばかりに自慢げに記者会見でファウチ所長を傍らに侍らせ、自由に発言させていた。
だが、ソーシャル・ディスタンシング政策が発令され、再選に向けて支持者を大勢集めたラリーができなくなったトランプは毎日のように行われる記者会見でもスタッフからまず賛辞を贈られ、自分がいちばんの人気者VIPでないとガマンがならないようだ。
ファウチは一貫して、全米でPCR検査数をもっと本格的に増やさなければいけない、まだまだ足りていないと言ってきた。これに対しトランプは、アメリカでは世界のどこよりもテスト数が多い(うそ)だの、検査を受けたい者は誰でも受けることができる(うそ)だの、あるいはそんなにテストは必要ないと、コロコロと発言を変えてきた。
トランプが3月末に記者会見の壇上でお得意の陰謀論に言及し、国務省のことを「ディープステート省」と呼んだときは、さすがにそれを横で聞いていたファウチも笑いをこらえ、手で顔を覆い隠すようにした映像がインターネットで話題になったが、ファウチは4月半ばまでは対策チームの一員として、毎日のようにトランプとともに記者会見に臨んでいた。時には記者からの質疑応答内容が、数分前にトランプが発言した内容と異なることさえあった。
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