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コロナ対策に「保証金」見直しを

Japan In-depth / 2020年5月9日 18時0分

我が国の法人の9割以上が中小企業である。その多くは小売店や飲食店、サービス業だ。保証金が数カ月程度になれば恐らく数兆円以上の資金が中小企業に流れ込んだのと同じか、それ以上の経済効果が期待できる。これはコロナ対策にかぎらず、中小零細企業の生存性と経営の効率化に大きく貢献するはずだ。また起業の促進にも寄与する。


保証金に払う金額が例えば30ヶ月分が3ヶ月分に減らせれば相当資金繰りが楽になる。黒字になるまで耐えられる期間は大幅に伸びるし、金融機関からの借り入れも減らせるから、利子の支払いも減らせる。また、より優秀な人材を雇うこともできる。レストランなら食材にかけるコストを引き上げ、より美味しい食事を提供することも可能となるだろう。


一般に、新規のビジネスは3年で9割が淘汰されるというが、この過大な保証金がなければ、より多くの新しいビジネスが生き残ることができるだろう。またサービス業の従業員は一般に所得が低い傾向にあるが、これも緩和されるだろう。


日本の輸出額はGDP(国民総生産)の15%程度、これに対して個人消費は55%を占める。その個人消費で多くの中小零細企業がメシを喰っている。またその経営者や従業員は消費者でもある。中小企業が元気になり、雇用が増えれば内需は拡大する。保証金の見直しは需要の拡大という点でもメリットが大きい。


大家にしても当局がきちんと、テナントの不払いや夜逃げに対応するならばメリットは大きい。仮にテナントが廃業したり、夜逃げしたりした場合、保証金で穴埋めができても、この状況下では次のテナントが簡単には容易には決まらない。



▲写真 イメージ 出典: flickr / Japanexperterna.se


休業補償と合わせて小売店、飲食店に保証料の過半を戻すようなシステムができれば、多くの業者が今回のコロナ騒ぎから生き残ることができるだろう。また雇用も維持できる。対して家賃が払えずに廃業した場合、多くの職が失われ、失業者を生むことになる。特に自営業者や経営者は失業保険にはいれないので、困窮が深刻な問題となる。


とりあえず、過渡的には政府が大家に何割かの保証金を返すように要請し、それでテナントが家賃の滞納や夜逃げした場合、当局が補償するようにすればいいだろう。その間法整備や、行政の実務の手順を詰めればいい。繰り返すが、これはコロナ以後の小売店の資金繰りや投資にも有用だ。


近年、実店舗の売り上げは大きく減退している。反面、ネットショップやネットモールは売り上げも新規参入者も増加の一途を辿っている。むろん、ネット通販の利便性がその大きな要因だろう。だがそれだけではない。ネットモールに出店しても10~60カ月などいう法外な保証金は要求されない。実店舗を出店するより遙かに低コストだし、リスクも少ない。自宅かマンションの事務所兼倉庫で商売が始められる。実店舗の小売店を生き残らせるためにも保証金の低減化は必要だ。


筆者はなぜ多くの政治家や、「経済の専門家」を自称する経済評論家やエコノミストがこの件に触れないのか不思議で仕方ない。


 


【参考文献】


・通産省「商業施設の差入れ保証金等に係るアンケート調査結果」(2000年8月)


・J-REIT商業施設の賃貸借における敷金・保証金の評価モデルを 用いた契約価値評価(慶應義塾大学理工学部管理工学科・枇々木規雄氏)


・経産省「テナント保証金問題研究会」テナント保証金問題研究会中間報告書


・民間にある「埋蔵金」商業不動産の馬鹿高い保証金(清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」2008年10月16日付)


トップ写真:イメージ 出典:flickr / Nori Norisa


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