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洋画では描けない世界がある(上) 家にいるなら邦画を見よう 5

Japan In-depth / 2020年5月15日 12時0分

逆もまた真なりで、この脚本がハリウッド映画に仕立て直されたならば、割とありふれた熟年男女のすったもんだが描かれているだけ、という風にしか見えない。私が抱かされた「これじゃない感」とは、煎じ詰めて言えば、こんなところであろうか。


さらに言うなら、前2作のテーマである禅や相撲も、果たして「日本の伝統文化」であると言い切れるか。お前が言ったんだろうが、という声が聞こえてきそうだが、伝統文化も時代の流れには逆らえない、という側面があることを忘れてはいけないのだ。


禅寺での修行は、さすがに特殊な例であるが、そもそも座禅を組んだ経験があるという人自体が、今の日本ではごく少数派だろう。相撲も、観戦スポーツとしての人気こそ保たれているが、底辺、つまり実際に相撲を取った経験のある若い人は、これまた圧倒的に少数なのではないか。番付の上位をモンゴル出身者が占めているのも、こうした傾向があらたまらないからではないだろうか。映画の中でも、前述のようにマワシをフンドシとしか認識していない女子大生がいたが、現実はそんなものだろうと思う。


幾度も述べてきた通り、私は昭和の小学生だったが、昭和40年代(1960年代後半〜70年代前半)ですら、少なくとも東京の小学校においては、相撲を取って遊ぶ、ということはなくなっており、プロレスごっこに取って代わられていたものだ。


とどのつまり周防監督が映画の題材に選んだのは、伝統文化と言っても、そのエッジの部分であり、3作目のテーマとなった社交ダンスも、ひとつの路線の延長線上にあったのではないか。


念のため述べておくが、私は『Shall weダンス?』という映画が諸外国で高く評価されたのは、社交ダンスというテーマが普遍的だったから、などと陳腐きわまることを主張するつもりはない。映画として、文句なしに面白かった。ただひとつ、主人公や周囲のダンス仲間が味わう、


「日本人の社交ダンスなんて……」


という否定的な評価との葛藤が、諸外国の審査員たちにちゃんと伝わったか、どうか。


やはりこれは「日本人だからこそ」味わえる面白さだったのかも知れないし、そんなことを考えながら映画を見るのも悪くない。


そうは、思いませんか?


トップ画像:イメージ 出典:Pixabay


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