剣道に見る感染リスク軽減策
Japan In-depth / 2020年5月29日 11時40分
なぜ、話すことが感染を拡大させるのだろうか。それは話すことで唾液が飛ぶからだ。
当初、新型コロナウイルスは風邪ウイルスと同様、鼻腔や咽頭で増殖すると考えられていた。ところが、その後の臨床研究により、口腔から大腸まで様々な臓器に存在することがわかった。
特に唾液には大量に存在する。米ラトガース大学の研究者は、唾液を用いたPCRの方が鼻腔より感度がいいと報告している。米エール大学、北海道大学、長崎大学でも追試され、同じ所見が確認されている。長崎大学の医師たちは、感染確認後、3週間が経過した患者から検出されたウイルス量は鼻の奥から採取した検体より、唾液の方が多かったと報告している。新型コロナウイルスのこのような性質を考慮すれば、感染者の約6割が味覚障害を自覚するのも頷ける話だ。
世界の研究者は、呼吸や会話などによって生じる飛沫(5~10マイクロメートル以上の大きさ)、エアロゾル(5マイクロメートル以下)などが、どのようにして周囲に感染させるかに注目している。
米国立衛生研究所の研究者たちが実施した実験では、1分間大声で話せば、少なくとも数千粒の飛沫が放出され、8~14分程度空中に浮遊していることがわかった。これが会話によって、新型コロナウイルスの感染が拡大する理由だ。
新型コロナウイルスの感染者には無症状の人が多く、彼らも周囲に感染させるから、無症状の感染者が稽古に参加すれば、周囲にうつすのは避けられない。
一方、エアロゾルが感染拡大に果たす役割については結論が出ていない。体外に放出されたエアロゾルは、数時間にわたり空中を浮遊し、時に気流に乗り周囲に移動する。中国の武漢の医師は、患者から6フィート(約1.8メートル)離れた空中から新型コロナウイルスが検出されたと報告している。
もし、エアロゾルが感染拡大の主役であれば、広範囲に感染するため、感染のコントロールは遙かに難しくなる。しかしながら、現時点で満員電車などを介した感染拡大は報告されていない。多くの研究者は、新型コロナウイルスはエアロゾルで感染拡大するが、その頻度は飛沫感染と比較して多くはないと考えている。
おそらく、新型コロナウイルスの感染の多くは会話による飛沫を介したものだろう。中国東南大学の医師たちが興味深い研究結果を報告している。彼らは記録が残っている7,324例の感染者の感染状況を調べたところ、屋外で感染したのはわずかに1例だったという。感染のほぼ全ては屋内で生じていた。
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