米暴動、コロナ失業も背景に
Japan In-depth / 2020年6月2日 11時0分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー【速報版】 2020#23」
2020年6月1-7日
【まとめ】
・米国暴動は労働者層の鬱積した不満が爆発した可能性。
・ミネアポリスは南部各州ほど人種差別が根深い感じではない。
・中国政府による国家安全法導入は法的に大いに疑問。
日本の大手メディアも漸く報道を始めたようだが、今アメリカの大都市では暴動と略奪が横行している。今週はまずこのニュースを取り上げよう。事の発端は確か、ミネアポリスの白人警官三人が拘束中の黒人市民を窒息死させた事件が大々的に報じられたことだと記憶する。実はこの種の悲劇、米国では決して珍しいことではない。
▲写真 警官に取り押さえられ窒息ししたジョージ・フロイドさんの死を悼んでの献花(ミネアポリス・ミネソタ州 2020年5月30日撮影)出典:flickr : Fibonacci Blue
では、なぜ今回この事件が全米を揺るがす大問題になったのか。恐らく最大の理由は新型コロナウイルス感染拡大で米国の失業者が急増したことだろう。3月以降、米国の新規失業者は2500万人を超えているはずだ。日本と違って簡単に解雇される労働者の多くは当然マイナリティ層、彼らの鬱積した不満が爆発した可能性がある。
ミネアポリスといえば、筆者が44年前に留学したミネソタ大学のある懐かしい町だ。同州を留学先に選んだ理由の一つは米国全国平均の州であること。意外に知られていないが、人種構成から生活水準、更には英語の方言まで、ミネソタ州の数値は全米平均に近いものらしい。確かに、言語は訛りのない平均的英語だったと記憶する。
人種構成的には白人が83.1%、アフリカ系が5.2%、ヒスパニックが4.7%、アジア系4.0%で、白人中心社会ではあるが、白人至上主義ではないというのが現地に住んでみた印象だった。実際に、同州では4割近いドイツ系に次いで北欧系が30%以上を占めているせいか、南部各州ほど人種差別が根深いという感じではなかった。
そのミネソタであのような悲劇が起きたのだから、筆者個人的には大きなショックだった。その後、抗議運動は瞬く間に全米主要大都市に波及し、サンフランシスコでは娘夫婦と孫娘が住む市内のアパート前にあるドラッグストアが略奪に遭ったという。今回のパンデミックは米国社会の恥部を劇症化させているようだ。
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