なぜ国会は中国を論じないのか
Japan In-depth / 2020年6月3日 18時0分
アメリカでは中国非難は感染の当初から明確だった。武漢での新たなウイルス感染症の猛威を隠し、警告を発した現場の医師らを懲罰し、虚偽の情報まで流した習近平政権の対応こそ、この邪悪なウイルスを全世界に広げた主因だとする非難である。その基礎には共産党政権の独裁の過多がそんな異様な対処を生んだとする認識がある。
トランプ政権の国家安全保障会議でアジア政策を統括するマット・ポッティンジャー大統領補佐官の5月4日の異例の演説はその認識を集約していた。同補佐官はホワイトハウスの中枢から流暢な中国語で20分間、演説をした。インターネットでの全世界で視聴できる形の発信だった。
▲写真 中国政府非難の演説をするマット・ポッティンジャー大統領補佐官(2020年5月4日)出典: U.S. Embassy in Georgia
「武漢で危険なウイルス感染拡大を世間に知らせて弾圧された李文亮医師は自由な情報開示のできる民主的社会を望んだはずだ。中国の国民が抑圧的な政権のかわりに国民中心の政権を実現させるか否か全世界が注視している」
中国の共産党政権と一般国民とを区分しながらその政権のウイルス対策を糾弾するという挑戦的な姿勢だった。
この姿勢はトランプ大統領が「中国との全面的な断交」という過激な言葉を口にして、「この感染症は中国政府の不当な工作がなければ、パンデミックにはならなかった」と断言する政権全体の正面対決の対中政策と一致する。
▲写真 新型コロナウイルスへの対応について記者会見するトランプ米大統領(2020年5月11日 ホワイトハウス)出典:White House
アメリカ政府はいま司法省、国務省、国防総省、教育省、エネルギー省などが各分野で中国を抑え、締め出し、取り締まるという強硬な措置を取り始めた。
連邦議会はもっと過激な中国糾弾に満ちている。共和、民主両党の議員たちが中国当局のウイルス国際感染への責任を追及し、発生源の探索から国際法での罪状の訴追やアメリカへの損害賠償支払いの請求までを活発に進め始めたのだ。法案や決議案の提出、そして議会としての調査の推進である。
これらの動きの背後にはアメリカ国民一般の中国非難が存在する。ハリス社の4月中旬の世論調査ではコロナウイルスのアメリカでの大感染について「中国政府に責任がある」と答えた人が全体の8割近くという結果が出た。
▲写真 習近平・中国国家主席(2020年5月28日 北京)出典: 中国政府ホームページ
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