金与正、文在寅脅迫2つの狙い
Japan In-depth / 2020年6月20日 1時18分
▲写真 金正恩氏 出典:ロシア大統領府
金与正はいま、金正恩の失政をすべて韓国に転嫁し、国民の関心を韓国の風船ビラと文在寅への憎しみに向けさせている。北朝鮮の統一戦線部、外務省、社会団体、企業がこぞって脱北者と韓国政府を糾弾している。そして労働新聞まで毎日のように韓国を敵とする論陣を張っている。そればかりか軍にまで「1号戦闘命令」を発令してこの動きを担保する行動をとらせている。まさに戦争前夜の状態と言える。
韓国を「敵」と主張し緊張を激化させることで、内部の不満を外に吐き出させようとしているのである。そしてここの数年間で目立ち始めた韓国や米国に対する「好感」を抑え込もうとしている。
今回の韓国脅迫戦術が成功を収めれば、その功績は勿論金与正のものとなるだろう。そういった意味で北朝鮮の今回の「大博打」は、金与正の権威を高めるためのものと言える。
今回南北共同連絡事務所を爆破した次の日に総参謀部報道官が、金剛山観光地区と開城工業団地、非武装地帯(DMZ)内GP(監視警戒所)に軍部隊を再配置すると発表したが、この計画はすでに先月、金正恩委員長主宰で開かれた党中央軍事委員会拡大会議で決定されていたもので、それを爆破の後に発表させたのは、金与正第1副部長の指示であるかのように見せるためだと内部消息筋は伝えてきた。そして最近のすべての出来事の中心には金与正党副部長の績積作りがある」と述べた。
それは金与正の権力基盤を強化させることが北朝鮮の権力構造を強化させることにつながるとの判断からだ。しかしこのような権力の分担がいかなる結果をもたらすかはわからない。金正恩の求心力を高めようとする今回の「大博打」が、成功しようが失敗しようが、金正恩体制は更に大きな試練を迎えるに違いない。
つぎにその狙いは制裁破りの強要と米韓の離間である。
北朝鮮は、結局米国から韓国を切り離さない限り、自分たちの思うように操れないとの結論に達した。そして文在寅政権を「裏切り者」と追い詰めている。それは、従北朝鮮の文在寅政権であっても、米国との関係と国際関係を無視してまで北朝鮮支援に出られないとの現実を目にしたということだ。
だから金与正は、米国にいちいちお伺いを立てる「事大主義」を捨てろと言っているのだ。守れもしない約束ならはじめから「ホラ」を吹くなともいっている。戦争瀬戸際政策で文在寅政権が「戦争の恐怖」に囚われ、国連安保理制裁を無視して北朝鮮支援に踏み出せば、米国との亀裂も深まる。これは経済支援と米韓の亀裂を同時に得る一石二鳥の策となる。この策は金与正談話の一つの柱となっている。
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