前途多難な日産自動車の再生
Japan In-depth / 2020年6月21日 11時0分
嶌信彦(ジャーナリスト)
「嶌信彦の鳥・虫・歴史の目」
【まとめ】
・日産、2020年3月期決算で6712億円の最終赤字。
・ゴーン氏の経営関与で社内の経営が安定しない弱点が問題。
・コロナ後の新しい生活にどう対応するかがカギ。
「利益を出していくことが難しくなった。拡大路線の失敗を認め、選択と集中を今後の経営の柱とする」
名門・日産自動車は2020年3月期決算で6712億円の最終赤字を出した。カルロス・ゴーン前会長は20年前に大幅なリストラと拡大路線で日産を一時急回復させたが、ゴーン氏と対立した日産の現経営陣は、再び経営が悪化したため、今後はゴーン路線と完全に断ち切り当面は生産・販売体制を縮小して構造改革に全力を尽くすと方針転換を明確にした。
内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は3月期決算の発表にあたり「2年前から拡大路線を修正してきたが、このままの状態を続けても利益を出していくことは困難だと認識した」と発表。約20年間のゴーン路線と手を切り、インドネシア、スペイン工場を閉鎖し韓国からも撤退して、21年3月期の固定費を前年同期に比べ3000億円圧縮するとしている。人員削減は従来計画の1万2500人を更に上積みする。このため世界の生産能力は年間700万台あるが、20年の生産能力は2割削減して年間540万台体制まで減らすと明言した。
▲写真 日産自動車 内田誠CEO 出典:日産自動車HP
ゴーン元CEOが就任初期に作った2000~2002年度の「日産リバイバルプラン」では国内5工場を閉鎖し、人員削減と合わせて1兆円規模のコストを削減したが、一方で、北米市場で販売台数を伸ばし日本を上回るなどの成績も上げた。しかし、その後ゴーン氏のワンマン経営や社内費の不正使用などもあって社内のゴタゴタが続き、ゴーン氏は逮捕された。2018年のゴーン逮捕後も幹部の間の対立や提携しているルノーとの関係悪化などで経営の混乱が続き、成長は伴わなかった。
日産自動車は、トヨタ自動車と並んで日本を代表する名門自動車会社だった。特に“技術の日産”といわれ、“販売のトヨタ”とは一線を画した特徴を持ち、数々の人気車種を生んできた。ただ昔から労組を率いていたカリスマ委員長の塩路一郎氏との対立が激しく、社内の経営統治がいつも問題視されていた。そこへ次に外部からゴーン氏が入ってきて経営を好き放題に動かし日本人経営者もゴーン派とアンチゴーン派に分かれるなど社内の経営が安定しないことが、日産の弱点といわれ続けてきたのが日産の歴史でもあった。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
大失速の日産「ゴーンの呪い」いまだ抜け出せず? V字回復に向けた急務とは
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月28日 5時45分
-
日産低迷、「売れる車がほとんどない」北米の窮地 特需は去り、本来の実力で明暗分かれる局面に
東洋経済オンライン / 2024年11月22日 7時40分
-
9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月19日 9時26分
-
仏金融検察局、ゴーン元日産会長と仏文化相の公判を請求
ロイター / 2024年11月18日 9時46分
-
ゴーン被告らを公判請求 仏検察、巨額報酬授受で
共同通信 / 2024年11月16日 6時26分
ランキング
-
1「僕は無実です。独房で5年半くじけずに闘い続けて良かった」2歳女児への傷害致死罪に問われた父親に『逆転無罪判決』
MBSニュース / 2024年11月28日 18時25分
-
2原発の汚染水処理めぐり12億円を詐取か…64歳の会社役員の男を逮捕 架空の発注があったかのように装った疑い
MBSニュース / 2024年11月28日 19時40分
-
3財源明確化、国民民主に求める=年収の壁で「論点」提示―自公両党
時事通信 / 2024年11月28日 16時5分
-
4194キロ衝突死、懲役8年判決…当時少年の男に危険運転致死を適用
読売新聞 / 2024年11月28日 15時40分
-
5「日本人は大好きだけど、もう限界です…」『ハッピーケバブ』在日クルド人の社長が悲鳴、親日感情をへし折る"ヘイト行為"の実態「理由もないのにパトカーを呼ばれて…」「脅迫めいた電話が100回以上」
NEWSポストセブン / 2024年11月28日 18時15分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください