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「日本初の女性首相」当分無理?(上)ポスト・コロナの「勝ち組」メルケル独首相その2

Japan In-depth / 2020年6月28日 23時0分

昨今話題の『女帝 小池百合子』(石井妙子・著 文藝春秋)によれば、彼女から出馬の意向を告げられた新聞記者は、やめておけ、と言ったそうだ。陣笠議員よりキャスターの方が、はるかに社会に影響を与えられるというのが理由だが、彼女はきっぱりと。


「最初は陣笠でも、陣笠で終わるつもりはありません」


と言い切ったそうだ。政界の用語に詳しくない方のために解説しておくと、戦国時代など昔の合戦では、身分の高い武士は兜を着用するが、足軽雑兵は革張りの(鉄砲が普及してからは、薄い鉄板もよく使われるようになった)浅い三角帽のようなものを着用していた。それが陣笠である。つまり彼女は、初当選の以前より、


「いずれは一国一城の主」


といった野心を抱いていたのだろう。


その後、小沢一郎氏が立ちあげた新進党、その新進党が解党すると、新たに旗揚げされた自由党、その保守党も分裂すると、これまた小沢氏を首班とする保守党と遍歴した。そして2002年末、小泉純一郎氏が率いていた自民党に入党したのである。


こうした遍歴は、マスコミから「政界渡り鳥」などと揶揄され、これが今に至るも彼女の政治的キャリアの代名詞となっている。


ここは公平を期すために述べておかねばならないが、実は彼女と似たような経歴の政治家は結構多い。


1990年代というのは、自民党のスキャンダルが続発して求心力が失われ、政党の離合集散が繰り返されて、やがて民主党政権誕生への地ならしがされる時期であったのだ。いわば政局の大混乱期であり、その混乱ぶりを象徴するのが彼女のキャリアだと言える。


このようなことが起きた背景については、拙著


『日本人の選択 総選挙の戦後史 1990年代』(共著・電子版アドレナライズ)


をご参照いただきたい。御用とお急ぎでなければ、1950年代から通読していただければ、戦後政治史を大づかみに理解できるであろう。もともと平凡社新書の1冊であったものを、再構成して分冊・電子化したので、通読しても新書1冊分の分量である。


宣伝はさておき、小池都知事のキャリアがあまりよく言われないのは、そこに、


「権力にすり寄る、ご都合主義の政治家」


というイメージがついて回るからであろう。そしてこれは、必ずしも「左翼マスコミ」による悪宣伝であるとは言い切れないと思う。


メルケル首相とて、冷戦終結からドイツ統一という、世界史的な混乱期に政治家としてのキャリアをスタートさせ、複数の政党を渡り歩いた。そして前述の、コール政権時代の闇献金疑惑でCDUが窮地に立たされた時には、大恩あるコールを手厳しく批判している(その後、和解した)。


要は「筋を通す人」と見られるか、単なる「権勢欲の権化」と見られてしまうかの違いであって、それは男女の区別と関わりない「自己責任」であると、私は考える。


具体的にどういう事かは、次回。


トップ写真:小池都知事 出典:東京都知事 小池百合子の活動レポートFacebook


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