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丁寧な説明と乱暴な議論 ポスト・コロナの「勝ち組」メルケル独首相 最終回

Japan In-depth / 2020年7月2日 21時57分

いずれにせよ、新型コロナ禍の問題は、果たして日本政府の対応が適切であったか否かも含め、もう少し時間をかけて、科学的に解明されなければならない。民度が高いから死者数が少なくて済んだ、で片付けるのは、いかにも乱暴だ。


それ以上に問題だと私が思うのは、この発言の真意を質された麻生副総理が(いささか分かりにくい話し方をする人なので、概略紹介すると)、


「欧米のように強制力を伴う外出規制をしたくとも、憲法上できないから、日本では<要請>にとどまった。にもかかわらず国民が自粛してくれたおかげで、死亡者数が少なかった。それを民度が高いと表現したまで。」


などと語ったことである。


ならば憲法改正の必要はないわけですね、で終わらせてもよい話だが、安倍政権はそのようには受け止めていないようだ。



▲写真 麻生副総理とペンス副大統領 出典:財務省HP


5月3日の憲法記念日に、改憲派の「リモート集会」にビデオメッセージを寄せた安倍首相は、その中で新型コロナ禍に触れ、


「憲法に緊急事態条項を盛り込む必要性」


を訴えた。これもまた、記憶に新しい。


前回も触れた稲田朋美・自民党幹事長代行は、かつて「憲法教」という言葉を使って物議をかもしたことがある。その伝で行くならば、安倍首相はもはや「改憲中毒」と言うべきではないだろうか。


これまた前にも述べたことであるが、野党・自民党の総裁だった当時は「天皇を元首とする」改憲案を取りまとめた張本人が、先帝が退位の意思を表明した際、憲法の天皇条項をめぐる議論は一切放棄して、ただただ改元の祝賀ムードに乗って万歳三唱をした。


その後は、憲法に自衛隊を明記すべき、との議論を繰り返していたが、


「命がけで国民の生命財産を守る自衛隊員が、憲法でその存在意義を認められないのはおかしい」


という論法では、有権者の多数派を納得させることはできなかった。警察や消防について、憲法にはなにか書いてありますか、で話はおしまいだからである。



▲写真 自衛隊の観閲式 出典:首相官邸Facebook


それがメルケル首相とどういう関係があるのか、という声が聞こえてきそうだが、かつてわが国では、


「西ドイツ(当時)は幾度も憲法を改正しているのに、我が国では一度も改正されない」


という議論が、改憲派の口からよく発せられていた。西ドイツという国名からもわかるように(正式にはドイツ連邦共和国)、第二次世界大戦の敗戦により、分断国家として再出発したかの国では、その状態を恒久的なものと考えることはできず、憲法ではなく「基本法」が最高法規で、その中に「統一の日に効力を失う」ことを、わざわざ明記していた。


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