「またしても」中止?(中)嗚呼、幻の東京五輪 その2
Japan In-depth / 2020年7月25日 23時0分
というものであった。当時の日本政府は、まず前者には、
「フランスのマルセイユなどと比べたなら、むしろ涼しい」
と反論し、後者に対しては、参加を表明した国にはそれぞれ100万円の補助金を出すと発表した。当時の日本円の貨幣価値は現在の5000倍近いと言われているので、参加国が50か国あるかないかと予測された(1936年ベルリン大会への参加を表明していたのが49か国)大会規模に照らしても、巨額の支出であるには違いない。
カネがものを言うのも、80年以上前から変わっていないのだ。招致活動の費用だけで10万円以上かかったとされている。
かくして1935年7月末、ベルリンのホテルで開かれたIOC総会で、東京かヘルシンキかの最終投票が行われた。31日の投票直前の最終プレゼンテーションでは、講道館の嘉納治五郎が、
「ヘルシンキなど背負い投げー!」
とやって満場大爆笑……というのは大嘘で、本当は、
「東京が遠い、という理由で五輪開催が認められないのなら、日本が欧州での大会に参加すべき理由もない」
と演説したのである。これが当時どのように受け取られたか、残念ながら信頼すべき資料が見つからなかったのだが、今の感覚で言えば、ほとんど恫喝ではあるまいか。
▲写真 嘉納治五郎氏 出典:『教育研究』第482号、初等教育研究会、1938年
ともあれ、最終投票の結果、東京36票に対しヘルシンキ27票で、アジアで初めての五輪が開催されることが決定。日本国内は大いに沸き返った。
ところが、準備が始まるのと前後して、大会の前途には暗雲が立ち込める。
軍部が「開催反対」に回ったのだ。
その理由と経緯は、次回。
トップ写真:東京タワーの窓文字 出典:Flickr; t-mizo
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