元々怪しいオリンピズム(上)嗚呼、幻の東京五輪 その4
Japan In-depth / 2020年8月1日 23時0分
読んでみて、状況証拠しかないですね、というのが私の率直な感想であったが。と言って、ある日クーベルタンの脳裏に、天啓のごとく近代オリンピックの構想が浮かんだとも考えにくいので、やはりアイデアの基礎となるものは、どこかにあったのだろう。彼はイングランドだけでなくヨーロッパ各地、さらには当時すでにプロスポーツの黎明期であった米国へも視察に出かけている。
ともあれ1880年代以降のクーベルタンは、欧米各国のスポーツ諸団、教育界、そしてなにより、代々のコネクションがあった上流社会を通じて新たな人脈を築き上げ、ついにはパリにて「スポーツ競技者連合会議」を招集。その席上、近代オリンピックの開催と、主催団体としてのIOC(国際オリンピック委員会)の設立が決議ざれた。
1894年6月23日のことで、後にこの日は「オリンピックデー」と称されるようになった。日本では1949年より、毎年6月23日に様々なイベントが開かれている。
ちなみにクーベルタンはIOCの2代目会長である。彼の当初の構想では、パリを皮切りに、持ち回りで開催してゆく、ということだったのだが、ギリシャの富豪であったディミトリオス・ヴィケラス(1835〜1908)という人物が、
「最初の大会は、アテネで開かれるべきである」
とクーベルタンらを説得し、当時の規定では会長は大会開催国から選出されることになっていたため、初代会長の座に就いたのだ。
▲写真 ディミトリオス・ヴィケラス 出典:pandektis
このあたりの詳しい経緯は、JOC(日本オリンピック委員会)のホームページなどを参照されるとよいが、クーベルタンのことを「近代オリンピックの父」と呼ぶこと自体は、まったく正当であると私も思う。
ただ、日本の読者に知っていただきたいことがひとつある。
実はこの人、ヨーロッパのインテリの間ではひどく評判が悪いのだ。その理由については、次回。
(このシリーズ、その1,その2,その3)
トップ写真:ローザンヌの本部前の記念碑 出典:Wikipedia; de:User:FreeMO
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