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コロナで見えた地方ルネサンス

Japan In-depth / 2020年8月22日 9時21分

鈴木はもともと、東京都の職員として、夕張市に派遣され、夕張市長選に立候補した。年収250万円の夕張市長としては、借金返済に奔走した。つまり、財政再建だ。そのために自ら現場に出向いた。私が以前取材した際、鈴木のこんな言葉が印象的だった。「財政再建は痛みを伴います。飲食店に呼び出され、4時間も住民からお叱りを受けることもあります。ただ、人はどんなに怒っていても、しばらくすれば収まってくるのです」。


忍耐強さが持ち味だ。人の話をじっくり聞く。それもそのはず。鈴木はもともと、高卒で都庁に入り、法政大学の夜間に通った苦労人だ。菅官房長官とも昵懇で、ある野党の国会議員は「緊急事態宣言にしても、鈴木知事は菅のいいなり」と批判する。


しかし、政治というのは実現するためには、根回しが必要だと思う。その上で、首長が自分の考えとして発信する。ただ、批判はすべてその首長が引き受ける。「結果責任は私が負う」。その姿勢が道民からの支持につながった。メモを読む官僚答弁では、説得力にはつながらない。


鈴木とは対照的に、強い批判を浴びたのは、石川県知事の谷本正憲だ。3月27日に、「無症状の人は(東京から)お越しいただければ」と県内への観光をアピールした。観光が大きな産業となっている石川県内の事業者を意識した発言かもしれないが、国内での感染者が急増している際の発言だ。



▲写真 谷本正憲石川県知事 出典:谷本正憲石川県連合後援会


「危機感がなさすぎる」と、全国で批判の声が噴出した。その後、石川県の感染者数は急増し、発言を撤回しているが、軽率のそしりは免れない。


谷本は、現職で最多の当選7回の知事だ。元自治官僚で、行政経験は長い。危機管理のノウハウは圧倒的に、経験値があるはずだ。


これまで日本では、官僚出身の知事が主流だった。とりわけ総務省。右肩上がりの時代には、それが無難だったのだろう。


しかし、今回のコロナ問題をきっかけに、そんな流れが変わるような気がする。コロナはそもそも経験のないような感染症だ。前例がほとんどない中、次々に判断を下さなければならない。法律や条例順守、前例踏襲とは違う手法だ。


人口減少という目下、日本が抱える大きな課題も、前例がない。右肩上がり、人口増加を前提に、行政は行われてきた。


首長は今後、地方においてますます重要になってくる。その判断は、住民の命に直結する。さらには、間違えれば、地域は衰退するリスクも十分あるのだ。


これは何も今に始まったことではない。これまでも首長の存在というのは、地域の将来を左右してきた。今後、このコーナーで、首長のリーダーシップをシリーズでお伝えしたい。


トップ写真:会見する鈴木直道北海道知事(2020年8月21日) 出典:twitter:@suzukinaomichi


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