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スー・チー氏、軍司令官と責任応酬

Japan In-depth / 2020年8月23日 11時0分

そして現在の少数民族組織との関係については「武力衝突は少数民族側が起こしていることであり、政府に反対しているのも彼らである。そして歴史を客観的にみれば軍が歴代政権を保護してきたことは明らかだ」と指摘して、現在の状況の責任を少数民族側に押し付けた。


その上で「1950年代の概念やイデオロギーに基づいて現在の和平プロセスを進めることは不適切だ」と指摘、具体的には言及しなかったものの、完全な和平実現には武装勢力側とともに政府側にも発想の転換が必要だという立場を示してスー・チー顧問への反論を試みた。



▲写真 ミャンマーのミン・アウン・フライン国軍総司令官(右)、左は茂木外相(2019年10月9日 東京) 出典:外務省ホームページ


■  「国軍は和平を望まず」の見方も


11月8日に投票が行われる総選挙では連邦議会上院(定数224議席)と下院(同440議席)の議席が争われるが、上下院ともそれぞれの議席の25%は軍人に割り当てられることになっており、実質的に有権者の投票で争われるのは上院の168議席と下院の330議席、合わせて498議席となる。


このように議会に特権的に議席を有して一定の政治的影響力、発言力を維持している軍が民主化運動のシンボル、旗手として軍政打倒を掲げて国民の圧倒的支持を背景に政権を担うことになったスー・チー顧問にとっては「目の上のたんこぶ」あるいは「喉に刺さったトゲ」として自由な政権運営の「障害」になっている、との指摘は根強い。


そうした指摘の背景には、軍がその存在感を誇示するために少数民族武装組織との緊張関係、対立関係の継続は不可欠であるとして、あえて「社会不安を煽り、それに対処する道を選択しており、軍は和平を実は望んでいない」とミャンマー民主化組織や人権擁護団体の間では以前から分析されている。


 


■  ロヒンギャ族問題解決を複雑化する軍


ミャンマーには北部カチン州やシャン州に最大組織といわれる「カチン独立軍(KIA)」や「ワ州連合軍(UWSA)」などが存在し、これまでの和平プロセスには「軍が信用できない」として参加拒否や極めて消極的な姿勢、武装解除拒否などの立場を取り続け、各地で軍との緊張関係が現在も続いている。


また、西部ラカイン州に多い少数イスラム教徒であるラカイン族の問題についても、武装組織である「アラカン・ロヒンギャ救世軍(ARSA)」の掃討作戦としてラカイン族の集落放火、略奪、婦女暴行、拷問そして虐殺とはなはだしい人権侵害事件を軍は繰り返し、国連や国際社会から「軍主導の民族浄化作戦」と厳しい批判を受けていることは記憶に新しい。


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