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金正恩の焦り 党大会前倒し

Japan In-depth / 2020年8月26日 11時0分

いま北朝鮮では、住民に対する配給だけでなく、軍人に対する配給さえもできなくなっている。そうした中で国民の金正恩に対する反発が高まりつつある。これまでのように住民の不満を幹部に責任転嫁し粛清する方法は限界に来ている。党中央の幹部だけを集めて指示を出すだけでは問題解決ができなくなっているのだ。全住民を巻き込んだ一大イベントでリセットし、統制を強化する新たに統治体制を組み直して、住民の反発を抑え込むしか方法がなくなっている。


労働新聞を始めとする最近の北朝鮮メデイアが、やたらと金正恩の「人民愛」を強調しているのはそのためだ。金正恩は7月の「老兵大会」で、老兵たちに向かって90度のお辞儀を5回も行った。洪水に見舞われた黄海北道ウンパ郡には、レクサスを運転して訪れるという演出まで行った。そして自身が所有する食料や物資まで与えている。脱北者が江華島から漢江を泳いで帰郷したじた際には、新型コロナ感染の疑いがあるとして開城市を封鎖したが、市民には最小限ではあるが1ヶ月分の生活物資を供給した。


こうした動きは、一般住民の金正恩に対する視線が厳しくなっていることを察知したうえでの動きだ。ほっておけば暴動につながるかもしれないと危惧しはじめているのである。


第三の狙いは、早期開催で全ての経済失政を新型コロナウィルスに責任転嫁しようとしていることだ。


新型コロナウィルス事態がなければ、経済破綻の原因が、核兵器とミサイル開発に国力を消耗させ、国際社会の制裁を受けたとの結論になるのは目に見えている。しかし今はその原因を全て新型コロナウィルスに転嫁できると判断したのだろう。


それは党大会開催の決定書で「過酷な内外の情勢が持続し、予想できなかった挑戦が重なるのに合わせて経済活動を改善することができなかったので、計画された国家経済の成長目標が甚だしく未達成となり、人民の生活が著しく向上しない結果も招かれた」としていることから見ても明らかだ。


第四の狙いは、米国の大統領選挙結果に合わせて新戦略を構築しようとしていることだ。


党8回党大会を来年の1月と定めたのは、国内事情の逼迫もあるが、米国の大統領選挙を見た上で、内外政策を新たに定めようとしていることだ。



▲写真 バイデン候補 出典:Flickr; Chatham House


今金正恩は、起死回生の一手を党8回大会に賭けている。ハノイ米朝首脳会談以後、主導権を失った北朝鮮の命運は、現在米国に握られていると言っても過言ではない。特に米中関係が対立へと向かい、新冷戦と言われている中で、北朝鮮が中国との新たな関係を構築するためにも米国の出方を見守る必要がある。


米国をどの程度まで脅迫し、どこで取引をするのかを見極めることは、金正恩体制の運命を間違いなく左右する。もう一度ハノイでの失敗のような事態を迎えると、今の金正恩体制では持ちこたえられないだろう。


トップ写真:金正恩氏 出典:ロシア大統領府


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