中国、アルゼンチンに急接近
Japan In-depth / 2020年8月26日 23時19分
山崎真二(時事通信社元外信部長)
【まとめ】
・コロナ禍で“親中”路線加速。中国と通貨スワップ更新で合意。
・対IMF交渉で米国の支援必須も、亡命事件で対米関係はギクシャク。
・対中緊密関係と対米配慮。“綱渡り外交”余儀なくされる政権。
中国が新型コロナウイルスの直撃を受けている南米の大国アルゼンチンに急接近している。
■ “ウィン・ウィン”のスワップ協定更新
アルゼンチンで中国の存在感が急速に増大したのは、左派のクリスティーナ・フェルナンデス元大統領の時代(2011-2015年)だ。この時期、両国は約20の協力協定を締結するなど中国の経済支援が本格化した。この後、2015年末から4年間政権を担当したマクリ前大統領は対中関係より、むしろ対米関係重視路線に傾いた。
昨年末就任したアルベルト・フェルナンデス現大統領(クリスチーナ・フェルナンデス元大統領とは血縁関係はない)は左派色の強いポピュリズム(大衆迎合主義)的公約を掲げていたこともあり、早くから対中関係強化に進むのではないかとの観測が流れていたが、ここに来て親中姿勢が一気に表面化した。
この直接のきっかけがアルゼンチンでの新型コロナ感染拡大とみる向きが多い。同国では3月初めに感染者が確認されて以来、感染拡大が収まらず、今月下旬には感染者数は約30万人に達している。
アルゼンチンの主要メディアの報道によれば、中国政府は3月半ばごろからアルゼンチン側と頻繁に連絡を取り、大規模なコロナ対策支援を実施した。
中国の支援に関し習近平国家主席とフェルナンデス大統領はたびたび書簡を交換。7月初めには同大統領から習主席あてに謝意を表明する書簡が公表された。これらの書簡を通じ両国はコロナ対策だけでなく、両国間の「包括的な戦略関係」を発展させるため、二国間協力を深化させる方針が明らかにされたという。
▲写真 中国の習近平国家主席 出典:中国外交部ホームページ
最近、両国間では宇宙探査分野に関する複数のプロジェクトで合意したのに加え、他の分野でも協力強化の話し合いが進んでいるもようだ。宇宙分野の協力は、マクリ前政権下で事実上ストップしていたが、今回の合意により協力が再開される見通し。
中国がアルゼンチンに対し「一帯一路」への参加を強く求めているほか、第5世代(5G)移動通信システムに関してもファーウェイがアルゼンチン当局への働きかけを強めているとの情報もある。
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