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潜水艦に瑞祥動物は不向き

Japan In-depth / 2020年8月28日 20時40分

だが、瑞祥動物名の採用は失敗した。


理由の第1は由緒艦名の少なさだ。瑞祥動物の殊勲艦名は2隻あるいは4隻と案外に少ない。


文句なしの殊勲艦は2隻だけだ。「蒼龍」「飛龍」だけだ。正々堂々と戦って沈んだ「瑞鳳」「祥鳳」を足しても4隻だ。


それ以外は不運の印象がつきまとう。「大鳳」「雲龍」(*1)  はあきらかにそうである。また建造や改修の経緯から「龍鳳」も近い印象がある。この3隻は使いにくい。(*2)


その他は瑞祥動物では括れない。


殊勲艦で示すなら「赤城」「加賀」「瑞鶴」「翔鶴」はそうだ。前二者は山岳名と律令国名、後二者は吉祥だが実在動物である。


それに次ぐ活躍をした六隻も同様である。「隼鷹」「飛鷹」も実在動物に近い。「鳳翔」と「龍驤」は形容詞的艦名である。「千代田」「千歳」は縁起地名ともいうべき艦名だ。



▲写真 軍艦飛鷹(ひよう)「飛鷹」は横須賀にある比与宇との通音で選ばれたようにも見える。「秋月」が江田島の秋月との関連があるように見えるのと同じである。ちなみにどちらも弾庫が存在する。 出典:Wikimedia


瑞祥動物では掛け値なしの由緒艦名は4隻分しか確保できないのである。旧空母名すべてを踏襲しても7隻しかない。吉祥動物として鶴と鷹を含めても11隻しかないのだ。


対して潜水艦保有数は24隻まで増加する。その点で潜水艦に由緒艦名を与えるには不適当な命名基準なのである。


 


■ 漢語艦名として座りが悪い


第2は漢語としての座りの悪さだ。瑞祥動物を名前とすると造語は避けられない。由緒艦名も少ないが動物名そのものも少ない。そして造語をすると和臭を伴う微妙漢語になりやすい。


「そうりゅう」型3番艦以降はそうなっている。はっきり言えば微妙な造語である。


なにより安直だ。「龍」の前に色を付す。あるいは日本海軍に倣い「瑞」「翔」をつける。または勇猛となるように「剣」と「神」と「闘」を前置した形である。


本来なら漢籍の裏付けが必要だ。軍艦名の「蒼龍」は『史記』の五帝本紀から「飛龍」は『易経』の「飛龍在天、利見大人」から取っている。


それを海自はやっていない。例えば「けんりゅう」は漢籍の裏付けを全く欠く。それ以外の艦名も四書五経には出てこない。正史まで広げて出てくるかどうかだ。(*3)


艦名としての収まりは悪くなるのは当然なのだ。


 


■ ちから強さを欠く


第三はちから強さの欠落である。


これも瑞祥動物を採用した結果だ。実物が存在しない動物の上、言葉として馴染みがない名前となった。そのため重みがない名前となってしまった。


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