TOKYO2022の可能性 嗚呼、幻の東京五輪その7
Japan In-depth / 2020年8月31日 18時0分
いずれにせよ、クーベルタンらにしてみれば、4年おきの持ち回り開催という構想を変える気は毛頭なかったが、ギリシャ国王の顔も立てなくては、ということで、なんと
「最初の大会から10周年」
などという名目のもと、アテネで大会を開催したのである。
その後この議論がどうなったかと言うと、これまたなんと、ゲオルキオス1世が暗殺されたことで、うやむやに終わってしまった。
この人は、もともとデンマークの王子であったが、立憲君主制への移行を求めていた当時のギリシャ議会と、ロシアやドイツなど当時の列強の支持を得て即位した。どうしてそのような王位継承が可能だったのか、ざっくり言うとヨーロッパの王侯貴族は(大別してカトリックとプロテスタントという、二つの流れはあるものの)、いずれも親戚みたいなものだからである。
即位後は議会の要求通り立憲君主制への移行を宣言し、また農業改革など近代化にも貢献した。なにより、イスラム勢力(オスマン帝国)に奪われていたクレタ島などの領地を奪還し、ギリシャ王国の領土を拡張している。
なかなかの名君であった、と評価する向きも多いが、武力行使を含む拙速な領土拡張は、当然ながら周辺諸勢力の反発を招き、1913年、暗殺された。犯人は「アルコール中毒の浮浪者」と発表されたが、逮捕直後に警察署で自殺しており、多くの謎が残る。
いずれにせよ、4年に1度各都市で持ち回り、というクーベルタンの構想は維持され、回を追うごとに盛況となって行く。
「国を挙げてのメダル獲得競争」
という傾向は、1924年、2度目のパリ大会(通算第8回)あたりから顕著になっていったとされる。このことは、後に『炎のランナー』という英国映画のモチーフになった。一方、1906年のアテネ大会に関しては、メダルの獲得記録などが、IOCの公式記録から削除されている。
早い話が「4年ごとの大会の中間年の大会」は、前例はあるものの、あくまでも「別物」でしかない。
それでも、くどいようだが新型コロナ禍がひとまず収束に向かうなら、との前提で、開催を検討する価値はあると、私は考える。
巨額の投資が無駄になってしまうから、などという政府筋の考えには同調できないが、経済へのテコ入れは必要なことであるし、たとえ別物になろうとも、新しい施設で、世界のライバルたちと真剣勝負を演じてみたい、と願うアスリートは、少なからずいるはずだから。
トップ写真)1906年アテネ大会
出典)Library of Congress
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