辞任と棄権とボイコット(上) 嗚呼、幻の東京五輪 その8
Japan In-depth / 2020年9月2日 23時0分
▲写真 男子200メートル走の表彰式 出典:Angelo Cozzi
「ブラックパワー・サリュート」と呼ばれ、五輪史上もっとも有名な政治的行為として語り継がれているが、IOCは即座に両名を除名処分とした。米国代表チームは当初、除名と選手村からの追放に難色を示したが、他の選手に類が及ぶのを恐れて、決定に従ったという。この処分の論理も、読者ご賢察の通り「スポーツに政治を持ち込むのはよろしくない」であった。
米国内でも彼らは非難の的となり、保守系の『ロサンゼルス・タイムズ』などは、あろうことか両名の写真に「ナチス風の敬礼」などとキャプションをつけたほどである。大坂なおみ選手も、
「色々なこといわれるので、怖くなって携帯電話の電源を切っておいた」
と語った。なにがあったか、想像に難くない。
お分かりだろうか。40年以上の時を経て、またアフリカ系の大統領が生まれた事実がありながら、有色人種に対する差別的感情は、それほど大きく変わっていないのだ。
とりわけ、スポーツ界においてもその傾向が残っており、
「スポーツに政治を持ち込むな」
という論理が、差別された側の抗議に対する抑止力として働くのであれば、それこそ偽善として糾弾されなばならないだろう。
もうひとつの問題である、ナショナリズムについては、次回。
トップ写真:大坂なおみ選手(2016) 出典:Flickr; Kate Tann
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