辞任と棄権とボイコット(下) 嗚呼、幻の東京五輪 最終回
Japan In-depth / 2020年9月3日 7時0分
この大会ではまた、野球が正式種目となったのだが、米国と台湾の試合の際、中国選手団が大挙して応援に駆け付け、その多くが野球のルールなど知らなかったと伝えられるが、台湾選手の一投一打に拍手を送り続けたのである。
当時はこれを、政治体制の違いを超えた民族の連帯感を示した美談として、日本のマスコミも好意的に報じていたものだが、今考えれば、おおかた中国共産党のプロパガンダの一環だろう。そもそも米国では人気のある野球で、多数のチケットが簡単に手配できるものかどうか。
早い話が、IOCという組織は「大国の意向」には逆らえないくせに、個々の選手、とりわけ有色人種に対しては、異様なまでに強圧的なのだ。
このようなことを述べると、ならばお前は、スポーツに政治を持ち込むことをよしとするのか、といった声が聞こえてきそうだ。私の答えは、
「時と場合で、そのような判断もあってよいと思う」
これである。
かねて私は、拉致問題を解決しないどころか非協力的でさえある北朝鮮に関しては、東京五輪に参加する資格などない、と主張してきた。これまたお約束で、スポーツに政治を持ち込むのはよくない、という反論にさらされるのが常だったが、古代オリンピア競技会の例を引いて私が再反論すると、黙ってしまう人も結構いた。
古代オリンピア競技会は、よく知られるように、すべての戦争を中断して開く「平和の祭典」であったが、パンクラスという種目に限り、スパルタ人の参加を認めていなかったのである。
▲画像 1915年に描かれた古代オリンピックの想像図 出典:flickr; Internet Archive Book Images
パンクラスとは、ギリシャ語で「すべての力」といったほどの意味だそうで、要するに総合格闘技である。前にプロレスの話をさせていただいた時に触れたが、レスリングで腰から下への攻撃を認めない「グレコ・ローマン(ギリシャ・ローマ風)スタイル」などというものは、実は19世紀にフランス人が編み出したもので、古代ギリシャ・ローマで行われていた格闘競技は、足蹴りや関節技を多用する、格段に荒っぽいものであった。
もちろん競技である以上、相応の手加減はあったはずだが、スパルタ人はこの点、例の「スパルタ式軍事訓練」を受けているものだから、首投げを仕掛けた際、そのまま倒れこんで相手の首の骨を折る、というような挙に出る。
こんな相手と試合をしたら、それこそ命がいくつあっても足りないし、競技で死傷者続出などということになったら、どこが平和の祭典だ、と言われただろう。この結果「スパルタ人は参加お断り」と決まったわけで、
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