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拉致問題解決は国際協調で安倍首相の「心残り」(上)「ポスト安倍 何処へ行く日本」

Japan In-depth / 2020年9月8日 11時11分

いずれにせよ、どうして北朝鮮は日本人を拉致するという挙に出たのか。


1950年に勃発した朝鮮戦争が、公式には終結しておらず、現在も「休戦中」であることはよく知られているが、その後、つまり1953年の休戦合意以降も、小規模な国境紛争や、相互に特殊部隊を相手領域に侵入させる、という事態は頻発した。


しかし1960年代以降、韓国経済が急成長し、インフラから兵器調達まで差をつけられた北朝鮮は、もともと人口では韓国の3分の1程度だという事情もあって、軍事的優位を保てなくなった。そこで共産主義シンパや工作員・スパイによる諜報活動を強化する方針にシフトしたが、韓国当局の厳しい取り締まりによって、それも次第に封じられ、潜入スパイは動きが取れなくなっていったのである。


「スパイのいない戦争は、目隠しをして戦うようなもの」


だと昔から言われるが、北朝鮮の上層部がこの事態に焦りを感じたことは想像に難くない。その結果、日本のパスポート(ビザなしでの入国を認める国が、もっとも多い)を入手したり、日本人に成りすましての工作活動を行うようになったらしい。


1987年11月、日本のパスポートを持った男女2名の工作員によって、大韓航空機が爆破される事件が起き、男性工作員は毒薬で自決したが、自決に失敗して捕らえられた女性工作員の自供により、拉致された日本人が、工作員の「現地化教育」を強要されていることが明るみに出た。それでも、政府・外務省、それにマスコミの動きはまだ鈍かった。


ここで正直に告白しなければならないが、当時ロンドンで現地発行される日本語新聞で働いていた私も、この情報に接した時には、半信半疑であった。


「北朝鮮がそんなことをするはずがない」


などとは、述べたことも考えたこともないが、もっと単純に、


(そんなことをして、一体どんなメリットがあるというのか?)


と疑問に思ったのである。工作員に日本語や日本の生活事情を教えるというなら、在日の協力がいくらでも得られるわけで……


だからこんなことを言うわけではないが、拉致問題解決こそ公約の「一丁目一番地」とまで言い切った安倍首相が、それを実現できぬまま辞任したことを、声高に批判する気にはなれない。この件に関しては、よく頑張ったと評価してよいとさえ思っている。


政治家が結果責任を問われるのは当然ではあるけれども、相手があることで、それも国際社会で孤立しようが意に介さない相手では、誰が首相の地位にあろうが、とれる手段はおのずから限られてしまう。


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