拉致問題解決は国際協調で安倍首相の「心残り」(上)「ポスト安倍 何処へ行く日本」
Japan In-depth / 2020年9月8日 11時11分
2002年に、当時の小泉首相らが訪朝した際、時の最高権力者であった金正日は、初めて拉致の事実を認め、口頭で謝罪した。その後、一部の被害者は帰国している。
▲写真 小泉純一郎元首相 出典:首相官邸
これは当時、北朝鮮としては経済危機を脱するために、日本との関係を改善して援助を引き出すことが急務であり、重大な外交的失点も「背に腹は代えられない」という論理で甘受したものと考えられる。
しかしその後、中国やロシアが米国に対抗する勢力として再び台頭してきたことから、北朝鮮は「漁夫の利」を得ることとなった。現在の金正恩政権にとっては、中国とロシアの後ろ盾があり、韓国も北の体制に寛容な政権となった。あとは米国トランプ政権をなんとかなだめすかしておきさえすれば、米国には絶対に逆らえない日本など、外交上の優先順位は、それほど高くないーーまあ、こんな判断をしているのではないか。
ただ、あらためて確認しておかねばならないことは、たとえば1977年に拉致された横田めぐみさんなど、北の工作員が国境を突破して上陸し、日本国民を暴力的に連れ去ったという案件である。これは国際法上、れっきとした侵略行為なのだ。
さらに言えば、拉致被害者の国籍は、日本のみならず韓国をはじめ、中国、米国、ラオス、タイ、レバノン等々、10か国以上にのぼると言われている。もはや北朝鮮の行為は、国際社会の秩序そのものに対する挑戦だと断じて差し支えない。
言い換えれば、日朝間の問題としてのみとらえるのではなく、国際社会に向けて、
「拉致問題を解決しない限り、北朝鮮を国際社会の一員と認めるべきではない」
と訴えてゆくのが、時間はかかるかもしれないが最善の道であろう。
誰が後継者になろうとも、また、ひとまずは新型コロナ禍への対応で手一杯であろうとも、この問題は政策の「一丁目一番地」でありつづけなければならない。
(中に続く。全3回)
トップ写真:拉致被害者御家族等との面会 出典:首相官邸
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