米、事実上の対中宣戦布告
Japan In-depth / 2020年9月13日 11時41分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・エスパー国防長官、米と同盟諸国は中国軍との戦闘準備する必要あると強調。
・中国軍抑止の努力には同盟国や友好国の協力が欠かせない 、とも。
・米中対決が臨戦状態近くまで激化した現実を指し示している。
トランプ政権が中国を軍事面でも明確に敵視する政策を打ち出すようになった。同政権のマーク・エスパー国防長官は最近の一連の政策表明で中国の人民解放軍はアメリカが主唱する「自由で開かれた」国際秩序を壊す目的で機能すると明言し、アメリカとその同盟諸国はその中国軍との戦闘の準備までをする必要がある、と強調したのだ。アメリカの日本など同盟諸国への軍事面での協力への期待も強く表明された。
エスパー長官はアメリカの中国に対する新たな軍事政策を8月下旬の論文と演説とで明示した。その新政策では中国をアメリカ側にとっての最大かつ切迫した危険な脅威と位置づけ、米軍も同盟諸国との連帯で中国側の軍事能力を抑える准有事体制の構築を目指すことを宣言した。
平時でのこれほど明確な戦時への準備の姿勢は珍しく、アメリカにとっての中国の軍事脅威がそれほど現実の危機感をもたらすのだといえよう。
▲写真 中国人民抗日戦争ならびに世界反ファシズム戦争勝利70周年記念行事 2015年 出典:ロシア大統領府
トランプ政権のこの中国敵視軍事政策の最新状況はまずエスパー国防長官が8月24日の大手紙ウォールストリート・ジャーナルに発表した論文で明らかにされた。
「ペンタゴン(米国防総省)は中国に対する準備を固めた」という見出しの同論文には副題として「中国人民解放軍は北京政府の独裁的な目標に奉仕する。アメリカとその同盟諸国はそれに対してすべての前線を防衛する」と記されていた。
エスパー論文はまず中国人民解放軍の特徴について以下の骨子を述べていた。
・人民解放軍は米軍のように国家、国民、憲法に奉仕するのではなく中国共産党にまず帰属して、その共産党の国内支配や国外での一方的な国際システムの拡大に努める。だからアメリカやその同盟諸国の「自由で開放された」秩序の保持にはきわめて有害な存在となる。
・人民解放軍はその政治目的の達成のため2035年までに現在の野心的な近代化を終え、2049年には世界最強の戦力を築くことを目指している。その計画では強力な通常弾頭ミサイル群を中心に高度のサイバー、宇宙、電子戦争の戦力の増強を進め、人口知能(AI)を独裁統治や特定住民の組織的な弾圧に使用する。
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