「改革志向の人」菅義偉 自民党総裁選その2
Japan In-depth / 2020年9月14日 1時0分
・最低賃金の低さが経営者の無能の原因。企業にとってこれほど能力が高く真面目に働いてくれる人材を安い賃金で働かせられるのは極楽浄土。しかし労働者にとっては地獄。
という考えである。生産性を上げるため、平均賃金を引き上げ、中小企業を再編するということらしい。
アトキンソンさんは賃金を上げられない企業は市場から淘汰されてしまえという考え方なのだが、そう簡単にいくのか?という疑問もある。それを政治がやるべきことなのかというそもそも論もそうだし、日本には独自の企業風土がある。中小企業の中には、成長より雇用を重視している企業もある。効率性重視で再編し、大きめの企業に統合されてしまっては、経営(ホワイトカラー)とブルーカラーに完全に分断されたような、階層化されたような欧米の企業みたいじゃないかと個人的には思う。
菅さんがアトキンソンさんの考えと同じかどうかは分からない。しかし、中小企業再編と最低賃金のアップという政策については、国民が納得できる丁寧な説明が必要なのではないだろうか。
■ 改革志向の政策
菅さんに話を戻して、具体的に見ていこう。基本的には安倍政権の踏襲ということなので、それほど変わりはない。独自色を出すのは次の段階であろう。
▲表 【出典】筆者作成
新型コロナウイルスで落ち込んだ経済を立て直すことを中心に、基本は安倍政権の継承となっている。また、日本の生産性の低さの現況でもあるDX(デジタル・トランスフォーメーション:デジタル技術やデジタル化された情報を活用することで、企業がビジネスや業務を変革し、これまで実現できなかった新たな価値を創出すること)が遅れているため、デジタル庁を設置し、縦割り打破で進めることなどが語られている。やはり最低賃金の引き上げが安倍政権との違いとして特徴的だ。
▲写真 豪雨での「ダム事前放流」でも省庁縦割り打破の手腕を発揮した菅官房長官。写真は群馬県みなかみ町の須田貝ダム視察時(2020年8月12日) 出典:菅義偉ツイッター
■ 3つの特徴
特徴は3つ。第一に、現実思考であること。理念やイデオロギーにとらわれない、実務派ぶりがわかる。やるべきことはやり、野党が好きそう、野党が従来主張していた政策でもよいと思ったら取り入れる。したたかという印象である。
第二に、行革の姿勢。デジタル化を進めて、一気に縦割りや問題を解決してしまおうと思っている。そのほかも行政改革的な意見は根強い。福田隆之さん(PFIや水道民営化の専門家)を官房長官補佐官(公共サービス改革担当)に抜擢したように、まさに行政改革路線を推進することは間違いないだろう。財政再建については「行革前提の消費税増税」を掲げている。
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