「穏健な中道」岸田文雄 自民党総裁選その4
Japan In-depth / 2020年9月14日 11時4分
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
【まとめ】
・岸田氏、ヒトを重視した人間中心の資本主義を掲げる。
・安倍政権の政策運営の「修正」、特に格差是正を目指す。
・岸田氏の政策は斬新な政策ではないが、みんながついていけるもの。
自民党総裁選。各候補の「人間力」「政策」を見ていく特別企画。
第4回は岸田文雄さんの政策。安倍政権を有力閣僚として支えた堅実な人は当選したらどのような政策を推進するのだろうか。HPや著書などを中心に見ていきたい。
■ 理念が前面に出た政策スタンス
今回掲げている政策は安倍政権の修正ということのようだが、大きく言うと、以下のような政策があげられる。
▲ 出典:筆者作成
理念は「分断から協調へ」である。ベースになっていて、多くにこの理念が貫かれている。キーワードは目的「格差是正」、手段「中間層への分配」ということであろう。 「アベノミクスが大きな成果を出したことは間違いない。ただ、成長の果実が中小企業や地方に行き届いておらず格差が広がっている」との事実認識に明確に表れている。
なかでも「新しい資本主義」という旗を掲げている。よりヒトを重視した、人間中心の資本主義ということらしい。
【ポイント】
・利益、短期的利益だけを重視し儲かればいいという功利主義の転換
・大企業が儲かるだけでいいのか?
・一部の資産家と大企業の社員とそれ以外の格差が開いている格差という分断の解消。
・取引関係の「見える化」という。全体として生み出された利益の配分、下請けの連鎖のなかでそこを改善したい。
・大企業と中小企業の「共存共栄モデルの構築」
持続可能性、長期的な視点というところにもつながる。
■ 穏健な中道政策
具体的に見ていこう。基本的には安倍政権の修正・問題の是正ということがうかがえる。
▲ 出典:筆者作成
新型コロナウイルスで落ち込んだ経済を立て直すことを中心に、基本は安倍政権の政策運営の「修正」となっている。中でも核となるのは格差是正である。最低賃金の引き上げについてもだが、株の売買や配当などによる収益=キャピタルゲインにかかる税率を引き上げ、それを中間層の負担減に充てることを検討に値すると著書で述べるなどベースになるのは「格差」という名の「分断」の解消である。
■ 3つの特徴
特徴は3つ。第一に、理念を打ち出している点。「持続可能な新しい資本主義の構築」「デジタル田園構想」「平和主義を基軸としたソフトパワー外交」と柱に掲げているなど、インテリ・知的エリート階層には響くものがある。特に、「持続可能性」にはこだわりを見せ、著書では長期的視野を強調し、ESG投資、SDGs、人間の安全保障といった部分を細かく記載している。
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