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見識と戦略性ある国連外交を【菅政権に問う】

Japan In-depth / 2020年9月26日 14時3分

日本の国連への不満には、長年世界第二(現在は中国に抜かれ第三位)の財政拠出国であるにも関わらず安全保障理事国改革で自らが常任理事国の地位が確保出来ていないことがあったものの、国連の平和維持活動(PKO)への貢献や国連機関への高い財政的貢献は続いていた。しかし、2017年に政情不安な南スーダンから施設部隊を撤退させて以来、日本の国連PKO貢献は南スーダンPKOの本部要員4人に留まり、それに伴って国連PKOに対する関心も低くはなっていた。それでも、2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)や気候変動に関するパリ協定などは受け入れてきたし、昨年まで国連への肯定的評価は否定的評価を上回っていた。これがコロナ禍を契機に一挙に下がったのである。



▲写真 自衛隊南スーダン派遣 出典:パブリックドメイン


日本の平和と繁栄は、国際の平和と協調なくしては安定的に持続させることは出来ない。国連は、特に大国が政治的に対立している時には有効な対策を打ち出せないことが多いが、それでもグローバルな課題の解決に多くの貢献をし、国際行動規範を設立したり、人権を保護・促進したり、気候変動への対処や持続可能な発展のための協調行動を促進しており、コロナ禍への対応では、一部批判はあったものの、WHOを中心に国際保健衛生規約に基づいた提言やワクチンが出来た場合の公正な配分などを実現すべく行動してきている。国連は国際機関であり、世界政府ではない。国連を構成する主権国家の深い関与とサポートが必要である。日本が、より現実的かつ実質的なサポートを行い、国際協調を進化させるためには、国連は何が出来、何が出来ないのか、また、どこをどのように改善していったら良いのか、明確な分析と理解が必要で、その中で日本の役割を考えていかなければならない。


日本は、2022年に安全保障理事会非常任理事国選挙に出る。そして、2023年から2024年にかけて2年の任期で安全保障理事会で活動することになる。世界最多の12回目の安全保障理事会入りとなる。それが、単なる地位の獲得だけで終わるのではなく、世界の重要な一員として実質的な貢献が出来るようにしなければならない。そのためには、現実主義と理想主義を合わせた視点と政策が必要であり、そのような政策を実行できる素地を今から作り上げていかなればならない。


日本の安全保障にとって米国は極めて重要であることに間違いはないが、だからといって常に米国に追随しているのでは、日本の本当の評価に繋がらない。11月の米国大統領選挙でバイデン氏が当選すれば、米国はオバマ政権時代の国際協調主義に戻ることが予想される。とはいえ、国際政治が大きく変動している中、現実に米国がどの程度国際社会を再度リードできるかには大きな疑問が呈されている。そのような中で、日本がしっかりと根を張った政策を打ち立て、国連を含む多国間外交に強く貢献していくことが出来るかどうか。新たな菅首相には大きな試練となろう。


トップ写真:国連 出典:Needpix.com


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