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通知文は金正恩の偽装謝罪

Japan In-depth / 2020年9月30日 18時0分

さらには銃撃したのは事実だが、遺体を焼いてはいないとも主張し、李さんが救命胴衣を着ていたにも関わらず、死体がどこへ沈んだかわからないなどとしている。遺体を焼いていなければ、救命胴衣を着用していた遺体は海上に浮かんでいるはずだ。



▲写真 射殺された李氏が乗船していた韓国海洋水産部漁業指導船ムグンファ10号 出典:韓国海洋水産部ホームページ


「統一戦線部通知文」の狙い


この事件が24日午前11時に韓国国防部から発表された後、韓国国民と国際社会から激しい非難の声が金正恩政権と文在寅政権に向けられた。特に救助措置を取らず、傍観した文大統領の姿勢には、国際社会からも非難の声が上がった。


この「通知文」の狙いはまず、金正恩の命令で銃殺・焼却が行われたことを否定し、こうした世論を鎮め、金正恩の権威を守ることにある。金正恩の命令で行われたとの認識が内外に拡散すると、それでなくともトランプ発言で残虐性が問題視されている金正恩のイメージ低下が加速する。それは、今後文政権を使いこなす上でも米国との交渉を進める上でも好ましいことではない。


そうしたことから通知文では、監視艇の艇長が自己決断で銃殺したと主張している。しかし、このような重要問題を、一艇長が決断したと言っても誰も信じないだろう。北朝鮮の唯一独裁システムではありえないことだからだ。北朝鮮では銃弾1発を発射するのも金正恩の許可がいる。


次に文在寅政権を窮地から救出することだ。閣僚たちのスキャンダルや経済政策の失敗でレームダック化が加速している文在寅政権をこのまま放置すれば、韓国での長期従北政権維持に赤信号が灯る。こうしたことから北朝鮮は、「韓国側からの強い要請」を受け入れ、迅速な「金正恩の謝罪演出」を行ったと思われる。それは、青瓦台に最初に掲載された9月25日の通知文が、韓国式用語で満ちていたことからも伺い知れる。疑問点を指摘されたこの通知文は、数十カ所を北朝鮮式用語に訂正して26日に再掲載された。


北朝鮮の謝罪が、自らの意思で出されたものでないことはまた、「統一戦線部通知文」が出た2日後に、北朝鮮が朝鮮中央通信が「南朝鮮当局に警告する」との題目で「領海侵犯するな」と厳重警告したことに示された。


そして狙いの3つ目は、高まる国際社会の批判をかわすことだ。現在四面楚歌状態にある金正恩政権が、これ以上イメージダウンすることは、米国との新たな交渉を進める上でも、中国、ロシアなどから支援を得る上でも好ましいものではないからだ。


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