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タイ深南部で8月以来の爆弾テロ

Japan In-depth / 2020年10月5日 23時0分


▲写真 パッタニー県 出典:Flickr; udeyismail


■ マレーシアとの国境を自由に移動


BRNなどタイのイスラム教テロ組織は、タイ深南部を活動拠点として、マレーシアとの国境を「自由」に移動して、タイ治安当局の追尾を逃れたり、潜伏したりすることが多いと指摘されている。タイ政府はマレーシア政府に対応策を要求しているが、長い国境地帯は陸路や小川で簡単に越境できることから実効的対処は困難とされていることもこの地域のテロ活動が収まらない一因といわれている。


1960年に設立されたBRNは同地域最大のテロ組織で、主にヤラー県、ソンクラ県さらにナラティワート県、パッタニー県の深南部4県を主な活動拠点にしている。同地方にはBRN内部の路線対立から分離した組織、さらに「パッタニー統一解放機構(PULU)」の分派、残党などの小グループが小規模ながらも爆弾攻撃、銃撃などで治安部隊との衝突、非イスラム教徒らへの襲撃、テロを繰り返し続けている。


いずれの組織もインドネシアやフィリピンのイスラム教テロ組織などと比較すると資金力、武装装備、国際的ネットワークなどの点では弱く、爆弾テロで使用されるIEDも殺傷能力が高いものではなく、大きな犠牲が出るケースは近年少なくなってきている。


■ テロ再開の狙いは和平交渉か


8月以降発生していなかった深南部での爆弾テロが今回起きたことで、「テロの連鎖が再開か」との懸念も出ている。パッタニー県のシンクタンク「深南部ウォッチ」のスリソンポ代表は米政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」系列の「ブナ―ルニュース」に対して「3月以降実質的に中断している政府とBRNによる和平交渉の即時再開、進展を促す狙いがあるのではないか」との見方を示している。


タイ政府側の和平交渉担当者はコロナ禍による移動制限が解除され次第、新南部、国境を接するマレーシア北部を訪問して交渉再開、早期進展を図りたいとしているものの、コロナ禍の終わりが見えず、時機が不確定なことがBRN側の焦燥感を高めているといわれている。


その一方で4月以降の「コロナ感染拡大防止対策」への協力として実施している一時停戦とはいえ、4月以降深南部地域では51件の事件が発生し、兵士・警察官10人を含む31人が死亡、51人が負傷するなど治安情勢は決して安定していない。


このため治安維持に当たる陸軍や警察は警備・警戒態勢を緩めておらず、そうした状況がBRNにしてみれば「コロナ対策集中のために実施している一事停戦にも関わらずタイ治安当局は態勢を緩めていない」と反発を強めていることが今回の爆弾テロの背景にあるのではないかとの見方も有力だ。


プラユット政権は首都バンコクなどで大学生ら若者層を中心にした「プラユット首相退陣、内閣総辞職、国会解散、憲法改正、王政改革」などを要求する反政府デモの気運が高まっており、10月14日には学生組織らによるゼネストも呼びかけられている。


コロナ禍、反政府運動の高まりと難しい局面を迎えているプラユット政権にとって、今回の爆弾テロ発生による一時落ち着いていたかにみえた深南部での爆弾テロ再開の兆しは、さらに深刻な局面を突きつけることになったといえるだろう。


トップ写真:プラユットタイ王国首相 出典:Flickr; Prachatai


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