カンボジア、米関与軍施設解体 中国と密約?
Japan In-depth / 2020年10月8日 23時17分
そうしたカンボジアだけに、「中国との密約履行のためにあらゆる選択が可能となる」との見方が根強く、東南アジアで警戒感が高まっているのだ。
■中国の「真珠の首飾り」戦略の一環
中国は東アジアから東南アジア、南西アジアを経て中東、アフリカに至るまでの地域を「海のシルクロード」「陸のシルクロード」として自らの経済圏構想に組み込む「一帯一路」戦略を多額の経済支援とともに進めている。
この「海のシルクロード」とほぼ重なる海域に海上交通路として整備を目指しているのが「真珠の首飾り」とよばれる戦略で、インドをはじめとする各国からは警戒感が強まっている。
中国はミャンマーのココ諸島に軍事通信施設を建設しており、インド洋への交通路確保と権益拡大の拠点としている。こうした状況でカンボジアのリアム軍港に海軍の拠点を中国が築くことになれば、タイからマレーシアを繋ぐマレー半島を挟んだ東西に中国海軍の足掛かりができることになり、海上交通路だけでなく海軍展開の根拠地という軍事目的達成に一歩近づくことになる。
▲写真 ココ諸島 出典:Flickr; NASA Earth Observatory
さらに中国はマレー半島の南端、シンガポール沖、マラッカ海峡を経由して南シナ海からインド洋に向かう航路(約2,000キロ)の大幅短縮を意図して、マレー半島で最も狭隘な「タイ南部のクラ地峡」に約50キロの運河建設をタイ政府に長年働きかけている。
もっともこの「クラ地峡運河構想」はタイ政府側が多額の費用や運河建設技術の難しさ、中国をはじめとする各国の政治的、軍事的思惑の交錯などから最終決断を示さずに長年構想段階に留まっている。
タイのプラユット首相はそんな中9月8日に「運河構想の棚上げ」と「陸路による回廊整備」方針を明らかにした。とりあえず「クラ地峡運河」を断念したことになるが、今後運河実現に向けて中国側からの多額の経済援助、技術支援などを条件にしたさらなる工作が激化するとの見方もでている。
カンボジア、タイをも巻き込んだ中国の「真珠の首飾り」戦略は穏やかなタイ湾の波を荒立てることになりそうだ。
トップ写真:カンボジアのREAM海軍基地 出典:Flickr; U.S. Pacific Fleet
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