印、中国の脅威に備え海軍力増強
Japan In-depth / 2020年10月9日 11時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・インドが海洋戦力増強推進。国防費は米ロ中に次ぐ世界4位に。
・対中国抑止へ、米豪との軍事・兵站協力。日本との防衛協力も。
・インドの戦略転換、国際連帯の防衛強化は日本にも意味ある新潮流。
インドが中国のインド洋での軍事脅威の増大に対抗して、海軍力の本格的な強化を開始した。インド独自の海軍力の増強に加えて、米国やオーストラリアとの軍事協力を推進し始めた。インドのこの海洋戦力強化策には日本との防衛協力の計画も含まれているという。
インドの海軍戦力の新強化と新戦略の象徴は2020年7月のアメリカ海軍との合同演習だといえよう。インド洋のベンガル湾南部に位置するアンダマン諸島、ニコバル諸島の近海でインド海軍の諸艦艇はアメリカ海軍の空母ニミッツ中心の機動部隊と演習を実施した。
この演習はいくつかの重要な意味があった。まず第一にはその海域の重要性である。アンダマン・ニコバル諸島の近海はベンガル湾内でもとくに戦略的比重の高いマラッカ海峡への航路上に位置する。第二次世界大戦の当時から枢要の戦略的海域とされてきたのだ。
第二には、インド海軍がアメリカ海軍、しかも新設のインド太平洋軍の指揮下の太平洋艦隊の主力空母と合同訓練をするというのはインド、アメリカの新たで大規模な軍事協力を明示していた。
そして第三にはこのインド軍・米軍の協力が明らかに中国の軍事脅威への抑止の意味を持っていたことである。空母ニミッツはインド海軍とのこの演習の直前に南シナ海で中国のスプラットレー諸島への軍事進出を牽制する作戦を展開していた。その延長としてインド海軍と演習することは中国軍に対する米印両軍の一体化の示威の意図がこめられていた。
インドといえば、従来、どの国とも同盟関係を結ばない非同盟運動の旗手として知られてきた。しかも東西冷戦中はソ連との協力関係に傾き、アメリカとの関係が冷却した時期も長かった。そのインドがいまやアメリカとの軍事的な絆を国際的に顕示するようになったのだ。
▲写真 モディ印首相(左)とトランプ米大統領(右)(2019年8月28日 G7ビアリッツ・サミットにて)。米印の軍事協力は進む。 出典:Narendra Modi facebook
この点についてインドのモディ政権のスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相がアメリカの大手紙ウォールストリート・ジャーナルのこの9月下旬のインタビューに答えて語っていた。
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