「飯塚は死刑」と連呼する虚しさ 再論・「正義」の危険性について その1
Japan In-depth / 2020年10月23日 18時0分
今回の件は、たしかに腹立たしい事故である。医師から運転をやめるよう促されていた高齢者が、フレンチの予約に遅れそうだからと、焦りのあまりまずは接触事故を起こし、その瞬間にパニックを起こして、さらにアクセルとブレーキを踏み間違えた……というのが、専門の事故鑑定人が下した結論であり、つまり、私も個人的には「死刑」を連呼したくなる気持ちも分からないではない。
それでもなお、皆いま少し冷静になる必要がある、と言わざるを得ないのは、被害者遺族の強烈な処罰感情や、刑事裁判の迅速化といった大義名分を掲げて、刑事被告人の権利を制限すべき、という動きが出ることを憂えているからに他ならない。たとえ「犯罪者の人権ばかり守れと言うのか」といった非難にさらされたとしても、だ。さらに言えば、裁判所は最後まで、万一か億一でも、本当に車に異常が起きた可能性を無視すべきではない。
本件のように大きく報道されることがないだけで、冤罪や理不尽な訴追によって人生を狂わされてしまう人というのは、実は一般に考えられているより、はるかに数多く存在するのだから。
次回は、その典型的な例を再検証する。
トップ写真:東池袋で交通事故死した母子のために設けられた献花台。正面の横断歩道で起こった事故(2019年4月19日)の一週間後に撮影。 出典:Asanagi
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