不妊治療の保険適用、弊害多し
Japan In-depth / 2020年10月24日 7時0分
近年は不妊治療クリニックの収入源となってきたのは、一人っ子政策が終わり、二人目の子どもを希望する中国人の受け入れだった。前出の記事には、中国人ブローカーの発言として、「(その価格は)日本人の3割増しから2倍くらいで、100~150万円が相場」と紹介している。このような中国人特需も、新型コロナウイルスの流行で終わってしまった。
この状況で、不妊治療が健康保険適用となればどうなるだろうか。不妊治療を健康保険で支払った場合の費用の総額は1000~1500億円と推定されている。医療費抑制が喫緊の課題である政府は、価格を抑制するだろう。前述した理由で、混合診療は禁止されている。多くの不妊治療クリニックが閉院に追い込まれるだろう。残った不妊治療クリニックも、価格が統制されれば、患者数をこなすしかなくなる。そうなれば質が下がる可能性が否定出来ない。
今回の不妊治療の保険適用は、日本の不妊治療システムを崩壊させるリスクを抱えている。繰り返すが、管政権が不妊治療を希望するカップルを支援する姿勢に私は賛成だ。ただ、現状で保険適用することが、どのような結果を及ぼすかは、もっと考えるべきだ。保険適用するなら、混合診療の規制を緩和すべきだが、最高裁判決があり、また価格統制権限を失う厚労省や、その恩恵を蒙る日本医師会との全面戦争になる。管政権に、そこまでの覚悟はないだろう。そう考えれば、現状での保険適用は弊害が多い。不妊治療希望者の自己負担の軽減のためには、保険適用以外にも希望者への経済的支援など様々なやり方がある。いまいちど、患者視点に立ち、見直すべきである。
トップ写真:生まれたばかりの新生児(イメージ) 出典:pxfuel
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