前途多難なマイナカード普及【菅政権に問う】
Japan In-depth / 2020年10月24日 18時0分
石井正(時事総合研究所客員研究員)
「石井正の経済掘り下げ」
【まとめ】
・菅政権、デジタル先進国・日本の構築に向けマイナカード普及に注力。
・カードがらみの犯罪増加や都市部/地方の関心の差が普及の障壁。
・「国民総背番号制」に対する忌避感がデジタル国家創設最大の障壁。
菅政権の戦略は、本格政権づくりのために、来年秋までに必ず到来する解散・総選挙を勝ち抜くこと。そのために、携帯料金引き下げ、不妊治療の保険適用、デジタル庁の創設という有権者にアピールする菅政権版「3本の矢」で確実な成果を挙げることが至上命題となっている。
その先に菅政権が見据えているのがデジタル先進国・日本の構築。その手始めとして、マイナンバーカードの普及に全力投球する構えだ。
同カードが行き渡れば国や自治体レベルでの目詰まりは解消、大幅な行政コストの削減と、行政サービスの円滑な展開が実現する。また、5G、6Gという世界と切り結ぶ戦いの展望も開けてくる。
菅首相に対しては、携帯料金下げなどの小技は目立つが、どんな国づくりを目指すのか見えないとする批判が強い。そうした批判をかわすためにも「デジタル先進国家づくり」は格好の旗印にもなるのだ。
ただ、デジタル国家への先兵を務めるマイナンバーカードの行く手は平坦ではない。折悪しく、ゆうちょ銀行など有力金融機関を舞台にしたカードがらみの犯罪が多発しカードの印象が悪くなった。また、都市部に比べて地方ではカードへの関心の薄さが続いているのも気懸かり材料となっている。
住民サービス向上の手掛かりとする銀行口座のひも付けについても、国家に資産内容を知られるのではないかとの疑念を払しょくできないままで、住民の動きに勢いは乏しい。同カードづくりの起爆剤と構想された「マイナンバーカードの所有者に最大5千円分を還元するマイナポイント制度」も、手続きの煩わしさなどから期待したほどの伸びに結びついていない。
▲画像 マイナポイント利用のイメージ 出典:総務省
今年4月以降、全国民を対象とした10万円の特別定額給付金の支給をめぐる騒動が発生した。その主因は行政の目詰まりだった。同給付金の早期受け取りにマイナンバーカードが有効とされたことから、自治体窓口にはカードの発行と給付金の申請を急ぐ住民が殺到して混乱、最終的には政権の評価も下げる結果となってしまった。これを受けて安倍前政権は同カードを全国民に普及する好機と捉えて動き、菅政権もそれを引き継いだ。
-
-
- 1
- 2
-
この記事に関連するニュース
-
【総務省】来春からiPhoneにマイナカード機能を搭載
財界オンライン / 2024年7月1日 15時0分
-
デジタル庁、スマホで本人確認「デジタル認証アプリ」
ASCII.jp / 2024年6月21日 13時15分
-
デジタル庁、マイナカードの「認証アプリ」公開 オンラインの本人確認にICチップ活用 何が変わる?
ITmedia NEWS / 2024年6月21日 12時21分
-
携帯契約時の本人確認、対面なら免許証や在留カードもOK デジタル庁が明言 マイナカード以外のICも対応
ITmedia NEWS / 2024年6月20日 16時25分
-
携帯契約の本人確認、“オンライン”はマイナカードのICチップ読み取りに一本化 対面もマイナカード“など”のIC読み取りが義務化
ITmedia NEWS / 2024年6月18日 13時57分
ランキング
-
1NYで人脈構築の小室圭さん、対照的な生活の眞子さんは「ほとんど外出せず」紀子さまが抱える“複数”の不安
週刊女性PRIME / 2024年7月4日 7時0分
-
2実刑判決で「頭が真っ白に」 法廷に両親の涙 静岡バス置き去り死
毎日新聞 / 2024年7月4日 20時58分
-
3「紅麹」サプリ問題、調査中の死亡事例81人に…先月末から5人増
読売新聞 / 2024年7月4日 20時59分
-
4新潟上越市でマンホール点検中の男性死亡 夕方になっても帰社せず捜索、マンホール内で意識不明の状態で発見
新潟日報 / 2024年7月4日 23時40分
-
5「魚民」の大量閉店は“大正解”か。運営企業「モンテローザ」の“稼ぐ力”は他社を圧倒
日刊SPA! / 2024年7月4日 8時53分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)