みっともない政権支持派(上)再論・「正義」の危うさについて その4
Japan In-depth / 2020年11月2日 23時0分
ところが、10月21日に発売された文春新書版では、このくだりを含む章などが削除されていた。
誰もが知る通り、菅首相は安倍内閣の官房長官を長く務めた人で、PKO(国際平和維持活動)に参加した自衛隊の日報問題にはじまり、世にいう「モリ・カケ・桜問題」すなわち森友学園、加計学園をめぐる疑惑や「桜を見る会」に関わる文書について「作成を怠った」どころか、数々の改竄・隠蔽疑惑でやり玉に挙げられた。
朝日新聞の記者が、会見の際にこのくだりを読み上げ、
「この文章を書いた政治家はどなたか、ご存じでしょうね」
とツッコミを入れたところ、
「知りません」
と答えたことまである。
冒頭『笑点』を引き合いに出したのは、実は話がここにつながってくるのだ。ネタだとすれば座布団一枚、差し上げたくなる笑。
真面目な話、こういうことをされると、菅内閣が掲げる「省庁の縦割り打破、ハンコ廃止」にしても、その心は文書作成の責任の所在を隠すためではないのか、などとつい思ってしまうのは、私だけだろうか。
文春新書の編集部はと言うと、あくまでも編集上の都合で
「なんらかの意図に基づく改変などではない」
などとコメントしている。首相となった菅氏のインタビューを新たに収録したため、
「バランスを考えて割愛した」
ということのようだ。
最初にこの報道に接した時点では、私は、個人的な感想ながら《文藝春秋社までが、なにをしてくれてんだ》などと思った。
いささか古い話になって恐縮だが、1995年に当時の中央公論社から『英国101話』という本を出していただいた。そして1999年、同書が中公文庫に所収していただけることとなったのだが、その過程で1章丸ごとの改変を要求された。
タイトルの通り、見開き2頁で1章という構成で、様々な角度から英国事情を紹介したものだが、日英の新聞事情について述べた章がある。その「つかみ」が、読売新聞の勧誘を追い返した話で、
「私は、私の目ではなく、Jリーグの運営にまで口を出す『例の社長』の目が黒いうちは、読売新聞は購読しない」(肩書は当時のもの)
などと書いたのである。
なぜそれが引っ掛かったのかと言うと、この年、中央公論社は読売新聞社の傘下に入り。中央公論新社として再スタートすることなっていたからだ。早い話が「忖度」であった。
結局私は、新社に自身の版権を譲渡することを拒否するという決断を下さざるを得なくなったのである。この顛末は、その後の騒動も含めて『英国101話プラスα』(電子版アドレナライズ)であらためて述べさせていただいたので、御用とお急ぎでなければご参照いただきたい。
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