勝者なき「大阪都構想」否決
Japan In-depth / 2020年11月4日 19時1分
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【まとめ】
・「大阪都構想」2回目の住民投票でも否決。
・インバウンドの恩恵を一番受けていた大阪経済はコロナで大打撃。
・維新、反維新、遺恨を棄てて経済再建に全力挙げよ。
2回目の住民投票でも否決された「大阪都構想」。政界への波紋は小さくない。松井一郎大阪市長は「大阪維新の会」の代表を辞任する意向を固めた。また、2年半の任期を終えたら政界引退をするとも表明している。「日本維新の会」の勢力を頼みとしているとみられる菅首相にとっても嬉しくない結果だったに違いない。
しかし、住民投票の結果は今回も僅差。大阪市民の意見は完全に分断された格好だ。確かに、満を持して臨んだ2度目の住民投票でまた敗北したことで「維新の威信」は地に堕ちたのは間違いない。しかし一部マスコミが予測するように、大阪における「維新人気」が急激に下落することは無かろう。ただし、政治というものは流れがある。次期衆院選は1年以内に来る。それまで維新が党勢を保てるかどうかがカギとなる。
大阪市民以外にとって「大阪都構想」への関心は薄い。しかし、大阪市民にとっても実は「都構想」はわかりにくかったのではないか。考えてみれば橋下徹大阪元大阪市長や松井現市長が都構想を掲げて大阪維新の会を立ち上げてから約10年。それだけの期間を費やしても、都構想のメリットは住民に完全に浸透したわけではなかったということだ。
橋下氏は当時から「都構想は統治機構改革だ」と主張していたが、話が大きすぎて大阪市民には響かなかったろう。住民にとって重要なのは生活コストや利便性にどう影響があるのか、の一点ではないか。そこで半数の人はメリットを感じなかった、ということなのだと思う。
また政治の論理で、公明党が賛成に転じたことも、多くの人が予測を見誤る原因となった。維新にとってみれば公明票が上積みされれば勝利は固い、と踏んだはずだ。しかし、蓋を開けてみれば公明票の約半数が反対に回った。地元で対抗馬を維新に立てられたら、ということで反対から一転賛成に回ったことが、公明党支持者からそっぽを向かれた原因だろう。維新・公明も、自民も、そしてマスコミも、否決を予測出来なかった。民意というのは、最後の最後まで分からないものだ。
■ 勝者なき住民投票
結論から言うと、一番大きく傷ついたのは「維新の会」。次に「公明党」だ。自民党との仁義を欠いてまで維新に協力したのに、支持者にそっぽを向かれたのでは泣きっ面に蜂状態だ。幹部の責任問題にも発展しかねない。菅首相も国政で維新の力をあてには出来なくなったという意味で割を食った。反対勢力だった大阪自民、共産市議団だとて、僅差での勝利ではもろ手を挙げて喜ぶわけにはいかないし、議会は依然、維新が多数派だ。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
斎藤元彦氏を見捨て、"無所属の対抗馬"を送り出して大惨敗…兵庫県知事選挙で撃沈した「本当の敗者」の正体
プレジデントオンライン / 2024年11月21日 16時15分
-
吉村洋文府知事しつこく大阪都構想「3度目の挑戦」示唆…2度「NO」なのに執着するワケ
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月21日 10時32分
-
橋下徹氏、吉村知事の“三度目”都構想にコメント 東京都の実現には「約50年。それくらいのこと」
スポニチアネックス / 2024年11月20日 20時47分
-
大阪維新の会 吉村洋文氏が代表続投「大阪都構想の案、もう一度大阪維新の会の皆さんと考えたい」
よろず~ニュース / 2024年11月20日 7時55分
-
吉村氏、都構想制度案作成 大阪維新代表再選で表明
共同通信 / 2024年11月19日 21時0分
ランキング
-
1「子供の小遣い程度」「到底納得できない」旧ビッグモーターが12万人へのお詫びに選んだ品
週刊女性PRIME / 2024年11月28日 7時0分
-
2「学校だより」でイラストを無断使用、賠償金17万6000円は教員が全額負担
読売新聞 / 2024年11月28日 9時0分
-
3北条氏政の墓所で卒塔婆を燃やした男、神社でご神木に火をつけた疑いで逮捕…樹齢250年の木から白煙
読売新聞 / 2024年11月28日 7時18分
-
4【小沢一郎氏インタビュー】自民党幹部に伝えた石破政権の宿命「連立をきちんと組まない不安定な政権では有権者に迷惑、短命に終わる」
NEWSポストセブン / 2024年11月28日 7時12分
-
5文京区のマンション火災で2人死亡、火元は猪口邦子参院議員宅…夫と娘1人と連絡取れず
読売新聞 / 2024年11月28日 10時25分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください